研究課題/領域番号 |
18K15793
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎哉 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (80790352)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スルフォラファン / 肝癌 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
【方法】in vitro実験としてヒト肝癌細胞株(HepG2、Huh-7)を用いて、Sulforaphaneの肝癌増殖に対する効果をWST-1 assayで検討し、細胞周期マーカーおよびNrf2の標的遺伝子発現の変化をRT-PCR法を用いて検討した。次にin vivo実験としてこれらの肝癌細胞株をnude mouseの左右両背部の皮下に3×106個ずつ接種したXenograftモデルを作成し、Sulforaphane(5μmol/day/mouse)の経口投与中における腫瘍体積変化を経時的に評価すると同時に、皮下から採取した腫瘍を組織学的に検討した。 【成績】in vitro実験で両細胞株の細胞増殖はいずれも、Sulforaphane投与により用量依存的に抑制がみられた。Nrf2の標的遺伝子(HO-1、MRP2、NQO1)のmRNA発現は上昇しており、細胞周期マーカーの検討からはcell cycle arrestが誘導されている可能性が考えられた。Xenograftモデルを用いたin vivo実験では、細胞株接種後5週目の腫瘍体積が対照群に比べてSulforaphane投与群では半減していた。また免疫組織学的な検討により、Sulforaphane投与群ではKi67陽性細胞数が対照群と比較して減少しており、Cleaved Caspase3陽性細胞数が増加していたことから、腫瘍細胞の増殖抑制とアポトーシスの亢進が確認された。さらに、Sulforaphane投与群ではCD34陽性域が対照群と比較して減少しており血管新生が抑制されている可能性が示唆された。In vitro実験の解析と同様に、腫瘍組織におけるNrf2標的遺伝子は発現が増強していた。 以上のことから、ヒト肝癌細胞株に対してSulforaphaneは細胞増殖抑制効果および血管新生抑制効果を示す可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験の目的であるスルフォラファンの肝癌に対する抗腫瘍効果は証明できた。今後ソラフェニブとの併用実験と検討している。
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今後の研究の推進方策 |
スルフォラファンの肝癌に対する抗腫瘍効果は証明できた。今後ソラフェニブとの併用実験と検討している。具体的にはまずinvitro実験で、SorafenibおよびSulforaphane併用とSorafenib単独投与における肝癌細胞の増殖やアポトーシスの変化を確認する。抑制機序として肝癌細胞におけるアポトーシス誘導を確認する。次にinvivo実験で上述と同様に2種類の肝癌細胞を用いたxenograftモデルで検討する。BALB/c-nudeマウスに肝癌細胞を1か所あたり3×106個接種し、無治療群、Sorafenib群(通常用量5mg/kg/日)、Sulforaphane(25mg/body/日)群、Sorafenib+Sulforaphane併用群の4群に分けて飼育する。5週後にマウスを犠死させ、腫瘍容積、細胞増殖、病理組織(Ki67、TUNEL)、細胞周期・アポトーシス関連因子(p21、CyclinB1、Caspase3など)の変化で確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験結果のデータ解析のために予定より高額な解析ソフトを購入したため。
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