研究実績の概要 |
2018年度は、膵がん患者の糞便検体を採取し、その後、検体からDNAを抽出して、抽出したDNAを用いてシーケンスを行い、腸内細菌叢を同定する準備を進めることができた。 具体的には、国立がん研究センター中央病院へ来院された便潜血検査が陽性であった患者、大腸がん等が予想される患者を対象とし、大腸カメラを行う前に患者へ研究内容を説明し同意を得て、糞便検体を採取した。採取した検体(常温保存1検体、凍結保存3検体)を、研究所に設置している超低温フリーザーへ保存する流れを実際に行なって確認した。さらに、採取した糞便検体から、質の高いDNAを抽出し、シーケンスを行う作業の流れについても同様に確認した。 これらの研究から、大腸がん患者に特徴的な腸内細菌種が存在することを明らかにし、イタリアの研究グループ及びドイツの研究グループと共同研究を行い、2018年4月にそれぞれNature medicine へ報告した(Thomas AM, Shiba S, et al. Nat Med. 2019;25:667-678., Wirbel J, Shiba S, et al. Nat Med. 2019;25:679-689.)。さらに我々の研究グループは、大腸腺腫から進行大腸がんへ至る多段階発がんの過程で、腸内環境が劇的に変化することを明らかにし、大腸腺腫から早期大腸がんにおいて特徴的な腸内細菌種を発見し、Nature medicineへアクセプトされた(Yachida S, Shiba S, et al. Nat Med 2019 in press)。 このように研究の流れを確認することができたため、2019年度には膵がん患者の検体を収集し、研究を進めていく。現在、研究代表者らは、膵がん患者の診療を行なっている肝胆膵外科および肝胆膵内科の科長と話し合い、効率的な検体採取の流れを確認中である。
|