研究実績の概要 |
マイクロRNA(miRNA)は細胞内で遺伝子発現を調整し大腸癌の発癌機構や微小環境の維持に重要な役割を担っていることが報告されている。近年、miRNAはエクソソームという脂質二重膜を有する細胞外小胞に保護された状態で細胞外へ分泌され、細胞間の情報伝達に寄与することが明らかとなってきた。大腸癌が進行する過程で細胞内miRNAのみならず細胞外に分泌するエクソソームmiRNAにも変化をきたし、周囲の微小環境に何らかの影響を与えると仮定した。この仮説を、近年確立された三次元オルガノイド培養システムを用いて様々な進行度の大腸腫瘍をin vitroで長期培養することで検証した。 大腸腫瘍からオルガノイドを作成し、ヘマトキシリン-エオシン(H-E)染色で分化傾向を確認した。オルガノイドの培養上清から超遠心によりエクソソームを分離した。オルガノイドの細胞内及びエクソソームからmiRNAを抽出し、マイクロアレイによる網羅的発現解析を行った。腺腫由来オルガノイド8例、癌由来オルガノイドを6例作製した。H-E染色により腸管上皮様の構造物が確認できた。超遠心で得られたエクソソーム分画は電子顕微鏡で膜構造を有する100nm小胞を観察し、ウエスタンブロットでCD9,CD63陽性を確認し得た。腺腫3検体及び癌3検体に関してmiRNA網羅的発現解析を行い、癌群において細胞内miRNAでは4個のmiRNAの発現亢進、10個のmiRNAの発現減少を認めた。エクソソームmiRNAでは3個のmiRNAの発現亢進、12個のmiRNAの発現減少を認めた。細胞内とエクソソームで共通してmiR-1246,miR-7107-5pの発現が亢進していた。
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