研究課題
まず我々は、食道アカラシアにおけるわが国の疫学研究は十分ではないことから、日本における罹患率と期間有病率、食道がんとの合併率、治療動向を調査した。全国のアカラシア患者数は、2005~17年の大規模なレセプトデータベースを使用して推定した。また、登録されている診断コードより、食道アカラシアと食道がんを合併している患者を特定した。さらにアカラシアの治療介入について調べた。約549万人の集団のうち、385人が食道アカラシアと診断された。罹患率は10万人年当たり0.81~1.37と算出され(男女比はほぼ1、診断時平均年齢は43.3±14.4歳)、期間有病率は10万人当たり7.0であった。年齢層にわたって、罹患率および期間有病率に統計学的に有意な増加傾向があった(すべてp<0.0001)。アカラシアを有する4人の男性が食道がんを発症し、アカラシアを有する食道がんの罹患率は100人年当たり0.25と推定された。治療介入については、64.7%の患者に初回治療として食道拡張術が行われ、そのうち56.9%で再治療が必要となった。経口内視鏡的筋層切除術(POEM)で治療された患者の割合は年々増加し、2017年は41.1%であった。以上の調査から、食道アカラシアの罹患率および期間有病率は他の国と同程度であること、食道がんの発症リスクはアカラシア患者で一般人口と比較し相対的に高いことが示された。また、主に実施されている治療法は食道拡張術であるが、POEMによる治療の割合も年々増加していることがわかった。
3: やや遅れている
食道アカラシア以外の罹患率・有病率算出の妥当性の検討にやや時間を割いたが既に研究成果を報告することができている。消化管運動異常症における組織学的解析の予備実験も開始している。
平成30年度までの研究内容を一層深めつつ、さらに食道アカラシア以外の消化管運動異常症の研究も進める。
研究に遅延が生じ、免疫組織学的解析のための試薬等の購入はH31年度に行うこととしたため未使用額が生じた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Gastroenterology
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10.1007/s00535-018-01544-8