悪性腫瘍の中でも通常型膵管癌は予後が非常に不良で新規化学療法や免疫療法の確立が急務である。近年新たに登場し、皮膚悪性黒色腫といった難治癌でも治療効果が期待される免疫チェックポイント阻害薬も、通常型膵管癌では間質が豊富な乏血性腫瘍あること、またその免疫原性が低いことなどから、同治療の効果は限定的であるとされている。しかしながら、近年の大規模なゲノム解析から膵管癌にも亜分類がなされ、免疫チェックポイント阻害薬の効果を期待できる免疫原性膵癌が存在する可能性が示唆されている。しかしながら、その同定のためには腫瘍局所の検体を用いる必要があるが、膵管癌の大部分は診断時に転移を有し、手術適応外であることが多く、解析のための腫瘍検体を得ることが難しい癌腫であることも課題であった。 今回、我々は超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)で得られた膵管癌の残余検体から、磁気分離法やフローサイトメトリーによる死細胞除去やソーティングシステムを用いることで、CD45陽性リンパ球を単離し免疫チェックポイント分子の発現を解析することに成功した。このことで切除不能例が大部分である通常型膵管癌においても、外科的手術で得られた検体を用いることなく、膵癌の免疫原性を解析することができる可能性がある。 これまでに超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診前に本検討の同意を取得した症例は9例で、得られた残余検体を集積している。また同時に末梢血から単核球を単離・保存している。同一患者における腫瘍局所と末梢血のリンパ球解析を行うことで、膵管癌の宿主免疫からの回避機構の解明にもつながる可能性がある。
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