研究課題/領域番号 |
18K15815
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤澤 浩一 山口大学, 医学部, 助教 (00448284)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 再生 / 肝臓 |
研究実績の概要 |
骨髄由来間葉系幹細胞は低酸素培養で未分化状態を維持したまま増殖することが知られているが、低酸素培養の装置やガスなどのコストがかかることが問題である。そこでより簡便に細胞を低酸素と同様の代謝状態に保つ低酸素模倣剤としてのDeferoxamine(DFO)の有用性が示されている。我々はDFO投与で発現が増加する細胞保護に関わるタンパクであるnuclear protein 1 (NUPR1)の働きについて解析することを目的とした。ヒトMSCはLonza社より購入し、3~8回程度継代を行ったものを使用した。増殖性は生細胞解析システムであるIncucyte、タンパク発現はウェスタンブロッティング(WB)および免疫組織染色を行って確認した。NUPR1はDFO投与時以外に、低酸素、アミノ酸飢餓、Spheroid形成時に発現が上昇し、細胞保護性に働くことが示唆された。NUPR1をノックダウンすると増殖性の低下が起こり、アポトーシスの亢進が認められた。NUPR1阻害剤であるtrifluoperazine (TFP)を投与すると増殖抑制とアミノ酸飢餓時の細胞死亢進が認められた。WBでは代償的にNUPR1の発現が上昇し、酸化ストレスの増加によると考えられるSOD2の上昇が認められた。DFO投与によって誘導されるNUPR1は細胞保護性オートファジーに関与するストレス耐性関連分子であり、本研究はMSCの生存改善につながる可能性があると考えられた。上記の内容について論文作成を行った(J Clin Biochem Nutr. 2019)。今後さらに遺伝子発現解析、代謝解析、ミトコンドリアの評価、未分化能維持、遺伝的安定性の解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・培養ヒト骨髄細胞を用いた低侵襲肝臓再生療法 患者間葉系幹細胞の評価をフローサイトメーターや遺伝子発現解析などを継続した。薬剤投与ではミトコンドリアを抑制する低酸素状態の代謝に関わる薬剤に絞り、鉄キレート剤DFOにより発現が増加するNUPR1に着目しMSCのステムネス維持や抗アポトーシス効果の評価を行った。この遺伝子発現を抑制することで脂肪分化抑制が認められ、低酸素下での有用性に関する知見を得た。今後論文投稿を行う予定である。 ・高品質な間葉系幹細胞の作製法の検討 これまでに有用であることをin vitroで評価した低酸素培養と鉄キレート剤についてさらにそのメカニズムについて解析を行った。間葉系幹細胞をこれまでに知られている4種類の鉄キレート剤で処理することで代謝変化がどのように異なるか評価した。
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今後の研究の推進方策 |
より高い治癒効果を持つMSCを創出するために、MSCの品質向上の可能性のある薬剤として鉄キレート剤に着目し、各種鉄キレート剤の評価を継続する。特に鉄キレート剤投与で増加するNUPR1というタンパクに着目して研究を行っていく。このタンパクがどのように細胞分化、オートファジー、低酸素応答に関与しているかNUPR1阻害薬も用いながら評価を行っていく。またミトコンドリアの活性化とエネルギー代謝に着目してMSCの品質向上についても解析を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子組み換えマウスの代謝解析を行う予定であったが、動物施設に蟯虫の発生が認められたため、実験を半年延長した。さらに新型コロナウィルス蔓延のため、出張が禁止されたため、予算を次年度に使用することとした。
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