C型肝炎ウイルス(HCV)に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は高いウイルス消失(SVR)率を示しているが,治療不成功後の薬剤耐性変異(RAS)が問題となっている.特に、Glecaprevir (GLE)+Pibrentasvir (PIB)にて再治療され,治療不成功となった症例ではNS5A領域の24番目(Q24K)、28番目(L28M)、30番目(R30E)、92番目(A92K)のアミノ酸の共変異が関連していることを報告した。そこでNS5A共変異を有するHCVレプリコン細胞を作成し薬剤耐性を確認した.Q24K/L28M/R30E/A92K共変異を有する1b型HCVレプリコン細胞におけるNS5A阻害剤であるDaclatasvir (DCV),Ledipasvir (LDV),Velpatasvir (VEL),Elbasvir (Elb)に対する50%抑制濃度(EC50)は,それぞれ野生型の約64万倍,64万倍,15万倍,5万倍で,R30E変異はR30Q変異と比較し1.45-39.4倍の耐性を示した.これらの薬剤はR30QもしくはR30Eを含む共変異に高度耐性であった.一方PIBに対するR30E変異のEC50は野生型の約1500倍とその他の薬剤よりも低いものの、R30E変異はR30Q変異の約800倍の耐性であった。また、NS5B阻害剤であるSofosbuvir (SOF)は野生型と共変異でEC50に差はなかった。 本研究により、GLE+PIB療法の不成功に関連するNS5A:Q24K/L28M/R30E/A92K共変異はPIBに高度耐性を示すことが、in vitro実験系で証明された。
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