研究課題
難治性炎症性腸疾患は、以前原因不明の慢性疾患であり患者数の増加が認められる。腸管での炎症反応は、白血球細胞膜表面に発現している接着因子インテクグリンと血管内皮細胞表面に発現するE-selection、ICAM-1、ICAM-2、VCAM-1、MAdCAM-1などの接着分子が結合して白血球の血管壁接着、そして消化管組織への浸潤・遊走が促進されることで増強される。よって、白血球の血管内皮細胞への接着を阻害することで組織炎症反応を抑制できることから、これらの白血球-血管内皮細胞の接着分子機構を標的とすることはIBDの治療戦略の一つになっている。しかし、α4β7インテグリンに対するvedolizumab抗体はIBD患者に有効で臨床応用されているが、抗体製剤は二次無効を起こす可能性がある。また、α4インテグリンに対するnatalizumab抗体は、有効性は得られたものの進行性多巣性白質脳症などの重篤な副作用が出現した。本研究では、最近、申請者らが新たに見出した細胞接着因子の膜輸送制御分子であるCUL3ユビキチンE3リガーゼタンパク質複合体による上記接着分子の輸送制御を以下の方法で解析することで、新たな接着分子による炎症性腸疾患の制御方法を見出すことが目的である。①CUL3ノックダウンによる上記接着分子膜タンパク質の局在変化の解析②上記変化を担当するCUL3複合体構成成分の探索・同定と複合体-基質結合阻害剤を探索③上記結合阻害剤による、生体での腸管炎症抑制効果の評価
4: 遅れている
CUL3を血管内皮細胞において発現抑制すると、細胞の形態が円形になり、細胞伸展・遊走運動能を失うことを見出した。そこで、細胞接着因子に着目し、その発現・輸送状況を解析したところ、インテグリンα2、α4、β1、VE-カドヘリン、P-CAMといった接着因子のタンパク質発現または輸送が抑制されることを見出した。CUL3発現抑制下での血管内皮細胞と白血球細胞における上記接着因子の発現、細胞内局在の変化を解析し、変化を確認できた接着分子に関して、さらに183種類のBTBPに対するsiRNAを用いてスクリーニングを行ないそれぞれの発現・輸送制御を担うBTBPを同定中である。
今後、同定する基質タンパク質のUb化による機能制御を解明する。さらには、本研究で構築する当該BTBPと標的基質とのAlpha Screening法を阻害剤探索に応用しシーズ化合物の創出を目指す。
研究計画に遅延がでているため。今後、研究のための試薬、道具などの消耗品に主には予算をあてる予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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