研究実績の概要 |
糖尿病自然発症ラットであるOLETFにおいて耐糖能異常が顕著に発現する20週齢から4週間,ブタ血清を腹腔内投与して糖尿病合併肝線維化モデルを作成した。同モデルに対してTGR5アゴニストとしてオレアノール酸(OA)、DPP4阻害薬としてアナグリプチン(ANA)の各単剤、さらに両剤併用による治療を施し、耐糖能、肝線維化、腸内細菌叢の変化について検討した。OA、ANA各単剤群で、HOMA-IR、QUICKIで評価した耐糖能異常は有意に改善を認め、組織学的な肝線維化の進展も著明に抑制されていた。さらにこの抑制効果は両剤併用群でより顕著であった。肝組織内のfibronectin、collagen1A1などの線維化マーカーの発現も抑えられていた。OLETFに自然に認められる肝脂肪化も治療群で有意に改善しており、TBARSアッセイで評価するとMDAについてはブタ血清投与群で有意に上昇しており、治療群ではそれが有意に改善していた。また回腸末端便の16SリボソームRNAを次世代シークエンサーで解析した結果、腸内細菌叢に対するOA、ANAの多様性への影響は認めず、門レベルではFirmicutes/Bacteroidetes比(F/B比)について比較するとOLETFでは非糖尿病ラットであるLETOラットと比較してF/B比が上昇しており、各薬剤治療群では耐糖能の改善と比例するようにF/B比が低下していた。今回のモデルにおいて肝線維化、肝脂肪化、耐糖能の改善を認めており、メタボリックシンドロームを合併する肝線維化病態において、TGR5アゴニストとDPP4阻害薬の併用治療は効果的である可能性が示唆される。
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