研究課題/領域番号 |
18K15827
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中川 良 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (60594596)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 原発性胆汁性胆管炎 / Ras阻害剤 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
本計画「 原発性胆汁性胆管炎への臨床応用を目指したRas阻害剤のスクリーニング」では自己免疫性肝疾患である原発性胆汁性胆管炎(PBC)のT細胞機能の抑制による新規治療開発のため、T細胞抑制作用を有するRas阻害剤の選出とその作用の解析をモデル実験により行う。 現在までの進捗としてRas阻害剤のスクリーニング系の構築、11種のRas阻害剤のスクリーニング、Ras分子とPBC病態の関連についての解析を行った。スクリーニング系としてはそのレポーター遺伝子としてIL-2を選択。そのプロモーター領域をルシフェレースベクターに組み込んだレポータープラスミドを構築。その後、T細胞系培養細胞であるJurkat細胞に遺伝子導入しレポーター細胞を構築した。レポーター細胞はT細胞受容体刺激によるT細胞の活性化をモニターした。 次いでそのレポーター細胞に11種のRas阻害剤を添加しそのルシフェレース活性を測定した。すると5種のRas阻害剤で明らかなT細胞活性の低下を認めた。その後、5種のRas阻害剤のT細胞活性抑制能を培養細胞を用いて評価し、その全てでT細胞活性の抑制を認めた。そのため特にT細胞抑制能の優れた3種を用いヒトCD4+T細胞のサイトカイン産生抑制能を評価した。それにより1種のRas阻害剤で強力なT細胞活性抑制作用が認められた。 in vitroモデルでの実験では胆管上皮とTCR刺激したCD4+T細胞との共培養により、CD4T細胞からの炎症性サイトカインにより胆管上皮より炎症性ケモカインが産生されることが示された。そして、それらに選出したRas阻害剤を添加すると、胆管上皮からの炎症性ケモカイン産生を抑制できることが示された。 このようにRas阻害剤はCD4+T細胞のサイトカイン産生を抑制し、CD4+T細胞と胆管上皮細胞の免疫コミュニケーションを阻害し得ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一次のRas阻害剤のスクリーニングによりT細胞抑制作用に優れたRas阻害剤を見出せた。これによりモデル実験での評価が可能となった。本解析では治療薬として応用されかつRas作用を有すると知られる薬剤を中心にスクリーニングを行ったが、確実なT細胞抑制作用を有する薬剤を選出する事ができた。これにより、本スクリーニング系の確かさも確認することができた。臨床応用が成されていないRas阻害作用を有する化合物は400種ほどある。本スクリーニング系は非常に簡易にそれらのT細胞への影響を測定できる。そのため、さらに有用なRas阻害剤の選出も可能な状況となった。これらの理由から進捗の評価とする。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として実験モデルを利用し、選出したRs阻害剤の作用について検証する。モデルにはPBCモデルとして知られるNod.c3c4マウスを用いる。これに選出したらRas阻害剤の投与し、その免疫動態とPBC病態の変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本計画のスクリーニング系が予定よりも順調に構築され、予定していた試薬よりも少なく解析が行えた。次年度以降はマウスモデルでの実験を予定しており、その実験試薬として使用する。
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