1.腫瘍血管内皮細胞(TEC)と周囲肝臓の血管内皮細胞(LSEC)の肉眼的・機能的・遺伝子学的違いを明らかにした。まず、TEC及びLSECの肉眼的・機能的相違の評価を行った。肝細胞癌に新生した癌血管(TEC)は肝臓血管に比べ、幼若で血管径のばらつきが大きく無秩序に新生した血管であり、漏出性が高く・灌流性の低い無機能血管である事が分かった。次にTEC及び肝類洞血管(LSEC)の遺伝子学的相違の評価を行った。予備実験から260個のTEC特異的遺伝子を選定していたが、これらの遺伝子のGene Ontology解析を行ったところ、TECは明らかに増殖能・血管新生能・抗アポトーシス能に関連する遺伝子が活性化している事が分かった。最終的に5つの重要なTEC特異的マイクロRNAを同定する事に成功した。同定した5つのTEC特異的マイクロRNAから治療標的となり得るマイクロRNAを探索した。血管内皮細胞株に対して、同定した5つのTEC特異的マイクロRNA抑制剤を添加し、管腔形成アッセイを行ったところ、2つのマイクロRNAを同時に発現低下させると、更に管腔形成が亢進する事を確認した。つまり、この2つのマイクロRNAが癌血管新生に重要なマイクロRNAである事を示唆した。同定した二つのTEC特異的マイクロRNAを肝細胞癌同種同所移植モデルマウスに投与し、癌結果のみ抑制され抗腫瘍効果を獲得する事を確認した。同定した二つのTEC特異的マイクロRNAは癌血管の萌芽に関わる遺伝子を調整する事で血管新生抑制効果を発揮する事が分かった。
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