研究実績の概要 |
大動脈弁狭窄症は、大動脈弁の硬化と左室肥大の形態変化を伴う疾患であり、さまざまな細胞において種々の細胞内シグナルが複雑に絡み合い発症する。本研究は、当初CircularRNAITCHに注目して研究を行い、Cirular RNA ITCHとITCHの機能が大動脈弁狭窄症発症に与える影響を検討する予定であった。Circular RNAITCHの標的であるmiR214は豚大動脈弁間質細胞で増加していたが、予想に反してCircular RNA ITCHを増加してもmiR214の発現に変化がなかった。一方で、豚大動脈弁間質細胞にITCHを過剰発現した場合、Runx2を抑制した。これらの結果からCircfular RNA ITCHではなくICTHの機能を中心に検討を行う方針とした。ヒト大動脈弁狭窄症サンプルと大動脈弁閉鎖不全症のサンプルを比較したところ、mRNAレベルでITCHの発現が低下しており、ITCHの機能低下が大動脈弁硬化に関与している可能性が示唆された。現在は、豚大動脈弁間質細胞に対してITCHは、DvlやRunx2と相互作用があることを発見し、弁の硬化を抑制できるか検討中である。 左室肥大に与える影響を検討するために、心筋細胞にITCHを過剰発現またはノックダウンを行い、Wnt刺激を行った。ITCHはDvl1, 2, 3を標的蛋白質とし、Wnt/βカテニンシグナルを抑制する知見を得た。心筋特異的ITCH過剰発現マウスに大動脈縮窄術を行い圧負荷を加えたところ、野生型マウスに比較して、心肥大を抑止し、心機能や生存率を改善する知見を得た。 ユビキチン転移酵素ITCHが大動脈弁硬化と左室肥大へ与える影響を同時に実験データをそろえることが難しかったため、左室肥大に与える影響を論文として報告した。大動脈弁硬化に関しては追加実験を行い、論文化を目指していく。
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