研究課題/領域番号 |
18K15847
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 雄大 京都大学, 医学研究科, 研究員 (10802762)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カルモジュリン / 不整脈 / iPS細胞 / QT延長症候群 / アンチセンス / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
近年、カルモジュリンをコードするCALM遺伝子変異により若年発症で重症なQT延長症候群(LQTS)やカテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)等のカルモジュリン遺伝子関連不整脈疾患が引き起こされることが報告された。カルモジュリンは普遍的に発現するCa2+検知タンパクであり、独立した3つの遺伝子(CALM1-3)が同一のアミノ酸配列のタンパクをコードするユニークな分子である。心筋細胞において、カルモジュリンは心臓L型Ca2+チャネル(LTCC)を始めとする複数のイオンチャネル、RyR2など多くのタンパクの機能を制御している。 本研究では、カルモジュリン遺伝子関連不整脈疾患の病態解析と新規治療法の開発を目的とし、複数患者(CALM2-E46K変異: CPVT, CALM2-N98S変異: LQTS, CPVT, CALM2-D134H変異: LQTS)よりiPS細胞の樹立し、解析を進めている。病態解析として、心筋細胞分化誘導後、パッチクランプ法、膜電位・Ca2+インジケーターを用いたイメージングシステムにより電気生理学的解析を行った。LQTS患者由来分化心筋(N98S変異、D134H変異)において健常人由来分化心筋と比較して、有意な活動電位持続時間の延長、LTCCの不活性化の障害が認められた。しかしながら、CPVT患者由来分化心筋(E46K変異)においては健常人由来分化心筋と比較して、LTCCの機能に有意な差は認められなかった。患者由来分化心筋を用いたKCNQ1がコードする緩徐活性型遅延整流性K電流(IKs)の解析も進めている。新規治療法の開発ではアンチセンスを用いた遺伝子治療に取り組んでおり、培養細胞においてCALM2の発現を抑制する複数配列を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞モデルを用いて、複数の変異において心臓L型Ca2+チャネル(LTCC)電流の解析を行い、変異によりチャネル機能への影響が異なっていることを明らかにした。また、LTCC以外にもKCNQ1がコードする緩徐活性型遅延整流性K電流(IKs)の解析も進んでおり、CALM遺伝子変異が様々な表現型を呈する機序の一部を解明できると考えている。 新規治療法の開発に関しても既に培養細胞を用いたスクリーニングによりCALM2を抑制する複数の配列を得ており、現在、iPS細胞由来分化心筋における抑制効果の確認を進めている。研究の進捗は概ね当初の予定通りで順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き遺伝子解析を行い、新たな患者の同定と臨床情報の解析、iPS細胞の樹立を進める。iPS細胞モデルを用いて、電気生理学的解析、binding assay等により病態の解明を目指す。新規治療法の開発に関しては、iPS細胞モデルを用いて新規治療薬となりうる化合物のスクリーニング、培養細胞にてCALM2発現抑制効果の認められたアンチセンスの心筋細胞における効果の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
vivoモデルにおける解析など一部計画より遅れが生じたため、繰り越す予定とした。 主にvivoモデルの作製と解析に使用予定である。
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