研究課題/領域番号 |
18K15849
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
内海 仁志 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (80815655)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リアノジン受容体 / 致死性不整脈 / カテコラミン誘発性心室頻拍 / カルシウムリーク / カルモジュリン |
研究実績の概要 |
心筋筋小胞体のCa2+(Ca)放出チャネルである心筋型リアノジン受容体(RyR2)は、カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)の原因遺伝子の1つであり、CPVTは致死性不整脈により突然死する疾患であるが、決定的に有効な薬物療法はない。CPVTの発症機序として、カテコラミン誘発性にRyR2からカルモジュリン(CaM)が 解離することにより、RyR2の構造変化を介して拡張期にRyR2から異常なCa放出(Caリーク)を生じ、致死性不整脈を引き起こすことを報告した。今回、N末端、 中央、C末端に各々変異を有するCPVTノックイン(KI)マウスを用い、Caリークの発症メカニズムの差異を明らかにし、点突然変異部位に応じたオーダメイド薬物治療の開発を目指す。野生型、N末端: R176Q-KI(N末端KI)、中央:R2474S-KI(中央KI)、C末端: R4496C-KI(C末端KI)マウスの単離心筋細胞をサポニン処理した。野生型、N末端KI、中央KI、C末端KIでは、カテコラミンを負荷(cAMP投与)してもFKBP12.6-RyR2結合親和性は不変であった。また、カテコラミン負荷により、 N末端KI、中央KIにおいて、CaM-RyR2の結合親和性は低下したが、野生型、C末端KIにおいては、CaM-RyR2の結合親和性は不変であった。RyR2のN末端に結合しドメイン連関を是正するダントロレンの効果を検証したところ、N末端KIでは、カテコラミン負荷時のCaリークを抑制したが、C末端KIではCaリークを抑制せずC末端KIには無効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
N末端: R176Q-KI、中央:R2474S-KI、C末端: R4496C-KIマウスの単離心筋細胞をサポニン処理し、ドメイン連関障害、 F-FKBP12.6のRyR2に対する結合親和性、CaMのRyR2に対する結合親和性の評価は、おおむね順調に進展した。本年度、R2474S-KIにおいて、カテコラミン負荷(cAMP によるPKAのリン酸化)時のドメイン連関障害の評価が行えた。具体的には、カテコラミン負荷によりドメイン連関は障害され、ダントロレンがドメイン連関障害を是正しうるかを、サポニン処理した単離心筋細胞でF-DPc10の結合速度を測定しドメイン連関障害を評価した。今後、サポニン処理したR4496C-KI単離心筋細胞において、カテコラミン負荷時に、Ca spark頻度が増加し、ダントロレンはCa spark頻度を減少させないことを個体数を増やして再評価する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
RyR2を安定化させるCPVT治療薬の候補として、ダントロレン、K201、CaMの結合親和性を強める化合物、マグネシウムなどを考えている。N末端アミノ酸(AA) 601-620に結合するダントロレンは、ドメイン連関障害を是正し、CaMのRyR2に対する親和性を強めるため、N末端と中央ドメインのCPVTには有効であるが、C末端 型CPVTのR4496Cには無効である可能性が示唆された。その機序として、カテコラミン誘発性にRyR2からCaMが解離せず、RyR2の構造変化を介さずにCaリークを生 じていると考えられる。今後は、C末端型CPVTに最適な治療薬を見つけ出せるような研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった蛍光ペプチドやペプチドの残薬があり、購入を見送ったため未使用額が生じた。この未使用額は令和2年度の実験試薬の購入に充てる。
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