心筋筋小胞体のカルシウムイオン(Ca)放出チャネルである心筋型リアノジン受容体(RyR2)は、カテコラミン誘発性心室頻拍(CPVT)の原因遺伝子の1つである。CPVTは致死性不整脈により突然死する疾患であるが、決定的に有効な薬物療法はない。CPVTの発症機序として、カテコラミン誘発性にRyR2からカルモジュリン(CaM)が解離することにより、RyR2の構造変化を介して拡張期にRyR2から異常なCa漏出を生じ、致死性不整脈を引き起こすことを報告した。 今回、RyR2のN末端、中央、C末端に各々変異を有するCPVT RyR2ノックイン(KI)マウスを用い、点突然変異部位の違いによりCa漏出の発症メカニズムに差異があることを明らかにした。野生型、N末端KI: R176Q-KI、中央KI: R2474S-KI、C末端KI: R4496C-KIの4種類のマウスから心筋細胞を単離しサポニン処理した。 野生型・3種類のKIでは、カテコラミン負荷(cAMP投与)してもFKBP12.6-RyR2結合親和性に変化はなかった。N末端KIと中央KIでは、カテコラミン負荷時にCaM-RyR2の結合親和性は低下し、RyR2からCa漏出が生じていた。ダントロレン(RyR2のN末端に結合しドメイン連関を是正し、CaM-RyR2の結合親和性を強める)は、Ca漏出を抑制した。中央KIにおいては、N末端-中央間のドメイン連関障害が生じていた。 興味深いことに、C末端KIでは、カテコラミン負荷時にもN末端-中央間のドメイン連関障害は生じず、CaM-RyR2の結合親和性は低下しなかったが(野生型と同様)、RyR2からCa漏出は生じていた。N末端KI・中央KIに有効であったダントロレンは、C末端KIのCa漏出を抑制できず、ダントロレンは、C末端KIには無効であることが示唆された。
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