本研究において血管病の進展におけるSirt7の役割を明らかにするため、Sirt7ノックアウトマウスを用いてワイヤー血管障害モデルを作成した。Sirt7ノックアウトマウスでは野生型マウスと比較して、血管障害28日後の新生内膜の増生が有意に抑制されていた。この表現型は平滑筋細胞特異的Sirt7ノックアウトマウスでも同様であったため、我々は血管平滑筋細胞(VSMCs)に着目し、細胞実験を行った。その結果、まずSirt7ノックアウトマウス由来のVSMCsでは、野生型マウス由来のVSMCsと比較して血清刺激による細胞増殖が抑制され、種々のCyclinやCDK(cyclin-dependent-kinase)ら細胞周期関連蛋白の発現が有意に低下していた。CDK2は細胞周期制御の中心因子であるが、Sirt7ノックアウトマウス由来VSMCsでは、CDK2蛋白の発現が著しく低下している一方、CDK2の発現を負に制御する、マイクロRNA 290-295の遺伝子発現量が有意に増加していた。 以上の結果から、Sirt7がマイクロRNAを介してCDK2ら細胞周期関連蛋白の発現を制御し、VSMCsの細胞機能を制御している可能性が示唆された。 この研究結果を、昨年2021年にCirculation journal誌に報告(Circ J. 2021 Nov 25;85(12):2232-2240.)した。同論文はCirculation Journal Award 2021 Experimental Investigation部門 最優秀賞を受賞し、2022年3月12日 web開催された第86回日本循環器学会学術総会において記念講演を行った。 Sirt7が今後血管疾患に対する新たな治療選択肢となりうることが期待される。
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