研究課題/領域番号 |
18K15854
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
野寺 穣 福島県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40769593)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | neural remodeling / 脊髄中間外側核 / BDNF / TrkB |
研究実績の概要 |
心筋梗塞後の交感神経活性亢進には星状神経節(SG)のneural remodelingという形態学的変化を伴う神経活動亢進が関与していると考えられている。この現象が交感神経系においてSGのみならず他の部位でも認められるのかは明らかにはされていない。本研究では生後10~13週齢の雄ラットで心筋梗塞モデルを作成し、その1~2週間後に脊髄中間外側核(IML: intermediolateral nucleus)が局在するTh2レベルの胸髄とSGを摘出し、SG及びIMLのneural remodeling評価及び、IMLにおけるbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)、tropomyosin-related kinase receptor B (TrkB)のタンパク発現の検討を行なった。心筋梗塞2週間後のSGはSham群と比較して神経細胞体の大きさの有意な増加が認められた。同様にIMLにおいても心筋梗塞群で神経細胞体の大きさ及び軸索密度の有意な増加が認められた。加えて心筋梗塞1週間後のIMLにおけるBDNFおよびTrkBのタンパク発現が心筋梗塞群において有意に増加していることが示された。またIMLにおける活性化ERK(Extracellular signal-regulated kinase)陽性細胞の割合は心筋梗塞群において有意に高値であった。以上の結果より、心筋梗塞後においてはIMLもneural remodelingをきたし、それにはBDNF/TrkB経路の活性化が関与していることが示唆された。心筋梗塞後、交感神経系全体において神経リモデリング現象が生じ、それが更なる交感神経緊張を引き起こしている可能性がある。本研究は心筋梗塞を始めとする慢性心不全患者における交感神経過剰活性の抑制という新たな治療法を確立する基盤になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
延髄腹外側野の同定が困難で、同部位でのneural remodelingは確認できていないが、IMLにおけるneural remodeling及びそれに関与している可能性のある神経栄養因子を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
・NeuRetベクターによるIMLのneural remodelingへの介入 ・neural remodeling抑制後の心室不整脈、心臓リモデリング評価
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次年度使用額が生じた理由 |
(未使用額が発生した状況) 2018年度に米国心臓病学会にて発表を行うための旅費にあてる予定であったが、個人的事情により参加できなくなり未使用額が生じた。 (次年度における未使用額の使途内容) 未使用額は2019年度の学会発表の旅費に充てることとしたい。
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