研究課題
本研究は、多施設共同前向き心不全レジストリであるWest Tokyo Heart Failure(WET-HF; 東京都近郊の8施設が参画)の研究計画の一部分として実施される。2018年4月から2020年3月までに1500例を超える患者情報が新規に登録され、WET-HF全体として6000例程度の登録症例数となった。本研究では、医療者の視点のみならず、患者や家族の視点ならびに社会環境の側面から現行の心不全診療の課題を明らかとすることを目的とする。従来から進めてきた医療者側からのアプローチとして、本邦ならびに欧米各国の心不全診療ガイドラインの中で、投与が推奨される薬剤や利尿薬と患者の長期的な臨床転帰との関連を検証し、2020年3月の第84回日本循環器学会学術集会(京都)にて演題発表を当初予定していた(2020年7月へ延期)。上記内容は医学雑誌への論文投稿を準備中である。次に、従来はあまり注目されてこなかった患者・家族の視点(多分に予後と関連することが予想される)として、不十分な患者教育とそれに起因する医療者・患者間の病状認識の乖離の有無を調査するため、WET-HFに登録され、その中でさらに同意を取得できた患者に100項目近い質問紙票(アンケート)への回答にご協力いただいた。同調査内容については、2019年欧州心臓病学会(Paris, France)で発表を行い、現在医学雑誌への論文投稿を準備している。新規の患者登録も順調に増えており、患者の在宅環境や社会支援体制、ならびにウェアラブル端末を使用した身体活動度の評価と生活の質(QOL)も随時行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
退院後在宅でのウェアラブル端末の紛失などが続き、登録被験者はまだ当初の目標に到達していない。慶應義塾大学病院や他関連施設で被験者登録を進めている段階である。
2018年4月~2020年3月までにEDC上に1500例以上の患者情報を新規に登録しており、本年中(最終年度)に患者基本情報や社会支援体制などの詳細内容を検討し、学会および論文発表を予定する。また質問紙票を用いた医療者患者間の病状認識の乖離について、解析・学会発表を終え、すでに医学雑誌へ論文投稿中である。患者QOLとウェアラブル端末で評価した生体情報に関しては、引き続き被験者登録を行い、学会・論文発表を予定する。
新型コロナウイルスの流行による国内外学会の中止・延期のため、学会参加費や渡航費で一部未使用の部分が発生した。次年度には臨床研究コーディネーター雇用や心不全関連患者QOL評価のための質問紙票使用にかかるライセンス費用などにその未使用分を充てることが想定される。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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