現在順天堂関連4施設にて症例登録が進んでおり、これまでに302症例が登録されている。登録された患者の年齢は中央値80歳、男性が52%であった。約半数が初回の心不全入院であり、かつ左室駆出率からの分類では約4割が左室駆出率の保たれている心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)、2割が左室駆出率がやや低下している心不全(heart failrue with mildly reduced ejection fraction: HFmrEF)、4割が左室駆出率が低下している心不全(heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)であり、この割合は過去の報告と一致する結果であった。冠動脈疾患の危険因子としては高血圧を6割、脂質異常症を4割、糖尿病を4割弱の患者に認めており、この結果も過去の報告と矛盾するものではなかった。その中で4割の患者が入院中に冠動脈造影検査を行っており、行わなかった理由として最も頻度が高かったものは腎機能不全であった。現在登録された患者の予後を追跡中であり、今後冠動脈造影検査を行った結果の介入の有無、また、その結果としての患者の予後および介入とその後の予後との関連を調査中である。 今回の研究の結果として、これまでの報告と一致して本邦における心不全患者に合併する冠動脈疾患の検索が行われる頻度は海外と比して高いことが明らかとなった。しかしながらこの日常診療での傾向が患者の夜ごとどのように結びついているのか、そして費用対効果分析などはこれまでに行われておらず、今後本研究で得られたデータを用い明らかにしていく必要がある。
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