研究課題
網羅的遺伝子解析を用いたミトコンドリア心筋症の診断率向上を目的として、申請者が新規開発した常染色体劣性疾患変異の同定ツール(Hamming Distance Ratio: HDR法)および同ツールを応用した染色体構造異常同定ツール(HDR-del法)を用いて、計44症例のミトコンドリア心筋症例における核DNA・ミトコンドリアDNA上の疾患変異・染色体構造異常の同定および変異の病原性に対する各種証明実験に成功しさらにミトコンドリアDNA変異症例においては心筋における高変異率(ヘテロプラスミー率)を証明した。ミトコンドリア病137症例の中で心筋症患者は特に予後不良であるという前年度の論文発表内容をさらに発展させ、原因遺伝子を同定したミトコンドリア病223症例の中で、心筋症合併例は20%と高率であることおよび心筋症非合併例と比較して予後不良であることに加えて、核DNA変異を有する患者はミトコンドリアDNA変異を有する患者に比較して予後が悪い事実を同定し、 海外の学術集会での発表を行った。さらにミトコンドリアDNA変異を有する患者の中で、罹患心筋での変異率(ヘテロプラスミー率)と心筋症重症度の相関をより正確に評価するため、ddPCRを用いたヘテロプラスミー率の測定実験を行い、従来のRT-PCR法との比較を行った。さらに罹患心筋とその他の臓器におけるヘテロプラスミー率の比較を行った。常染色体優性疾患変異に対する新規遺伝統計手法であるheterozygosity mapping法を開発して実家系での検証に成功し、同アルゴリズムを搭載したソフトウェアを公開し論文発表を行った(Imai-Okazaki A et al, Hum Mutat 2019). さらに同定したミトコンドリアDNA欠失の定量法についてddPCRを用いた方法論を確立し定量化に成功した。
2: おおむね順調に進展している
当年度に予定していた解析予定のサンプルの網羅的遺伝子解析および変異の病原性の証明実験は順調に完了した。さらに新規に、心筋およびその他の臓器でのdPCRを用いたミトコンドリアDNAのヘテロプラスミー率の測定方法の確立および従来法との比較による検証を行った。またミトコンドリア心筋症の原因変異同定に際して課題となっていた常染色体優性疾患変異の絞り込みに対する新規遺伝統計手法の開発および実家系を用いた検証にも成功した。次年度は開発した新規ミトコンドリアDNAのヘテロプラスミー率を用いた測定を行う対象を拡大し、ヘテロプラスミー率と予後との相関について検討を行うとともに成果を論文化する予定である。
新規にミトコンドリアDNA変異を同定した患者における心筋でのヘテロプラスミー率の測定を行い予後・重症度との相関を検証する。さらに心筋以外の組織(血液等)を用いた早期診断の可能性についても検討を行う。開発済みのHDR法・HDR-del法および初年度に開発した常染色体優性疾患変異に対する絞り込み手法を活用した網羅的なミトコンドリア心筋症の遺伝子解析により、原因遺伝子未同定の解析済検体の診断率向上を目指し、遺伝学的に診断のついたミトコンドリア心筋症例において遺伝子変異と予後との相関に対して得られた知見に関して論文化を行う。
今年度発表予定であった学会が新型ウイルスの影響で次年度に延期になったこと及び予定していた実験が一部次年度に繰り越しとなったため。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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巻: - ページ: -
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