ストレスを契機に発症するたこつぼ型心筋症は、女性が疾患全体の80%程度を占める疾患であるが、発症急性期の心合併症は男性が多いとされている。特異的な治療法、予防法が現在確立しておらず、病態解明が急務であるとされており、今回我々は男女差の観点から病態解明にせまることを目的とし研究を行った。 発症急性期のたこつぼ型心筋症のカテーテル検査時に、壁運動低下が低下している心尖部から心筋生検を行い病理学的検討、遺伝子発現の精査を行い、且つ臨床経過を男性1例、女性1例で比較を行った。病理学的検討において、男性では心筋の収縮帯壊死、炎症細胞の浸潤が多く、心筋障害の程度が強いと示唆された。臨床経過においても男性では心不全合併、peak CKが男性の症例で女性より高く心筋障害が強いとされる経過であり、病理学的検討と矛盾しない所見であった。遺伝子発現において、男性ではミトコンドリア代謝経路、plasma membraneの異常が女性の症例より認められ、この異常が心筋障害をより悪化させている可能性が示唆された。この報告は、Examination of gender differences in patients with takotsubo syndrome according to left ventricular biopsy: a case report.としてJournal of Medical Case Reportsに2021年4月に報告することが出来た。 この結果を踏まえて、さらに症例数を増やし、たこつぼ型心筋症がなぜ男性で重症化するのかが分かれば、治療法、予防の解明に繋がる可能性があると考える。
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