研究実績の概要 |
1.Mtus1バリアントの発現制御解析 Mtus1の3つのバリアント(Mtus1A, B, C)は、5 prime側が特異的な配列を持ち、3 prime側は一部配列が共通していることから、バリアントの発現は異なる転写因子により制御されていると考えられた。そこで、心肥大に関与する転写因子として知られているc-Myc, GATA4, TBP, MEF2をアデノウイルスベクターにより、仔ラット心筋細胞に強制発現させた。その結果、c-Mycの強制発現によりMtus1Aの発現増加がみられ、c-MycがMtus1Aの転写因子として働いていることがわかった。しかし、Mtus1B, Mtus1Cの発現に変化は見れなかった。 2.ヒト心筋症サンプルを用いたMtus1A蛋白の発現解析 予備実験として、我々が既に作成しているMtus1バリアントを特異的に検出する抗体を用い、仔ラット心筋細胞でタンパク発現解析を行った。バリアントをそれぞれアデノウイルスベクターで強制発現させたところ、Mtus1Aはミトコンドリア、Mtus1Bは核膜、Mtus1Cは微小管と、局在が異なることを明らかにした。心肥大モデルマウスを用いた組織学的検討では、心筋においてMtus1Aが増加していることがわかった。 我々は、拡張型心筋症患者よりバチスタ手術の際に取り出された心臓から、cDNAを取り出し保管している。このサンプルは、個人情報保護法改訂前に取得され、すでに匿名化され個人を特定できないものである。このサンプルを用いて、RT-PCRにてMtus1Aの発現を調べたところ、正常心と比較し、Mtus1Aは多いもので1.8倍に増加していたが、減少しているサンプルもあった。Mtus1Aの発現解析や機能解析には、臨床背景や心機能の評価を合わせて考えることが重要であることがわかり、ヒトサンプルを用いた実験を行うため、研究計画書を作成している。
|