研究課題
病的心を用いて、(1)SKチャネルの機能評価、(2)SKチャネルの構造評価を行った。(1-1)病的心での膜電位光学マッピング法を用いてSKチャネルの機能評価を検討した。【結果】虚血心(虚血30分後)、肥大虚血心、交感神経活性化(イソプロテレノール投与下)肥大心のいずれの病的心においても、病的心での活動電位持続時間(APD90)の短縮を認め、この短縮はSKチャネル遮断薬(アパミン)による改善を認めた。さらに肥大虚血心においては、アパミンによる細胞内カルシウムトランジェントの改善を認めた。また、交感神経活性化肥大心では、CaMKII阻害薬(KN93)投与によるアパミン効果の消失を認めた。(1-2)病的心の催不整脈性におけるSKチャネルの効果を検討した。【結果】上記のいずれの病的心においても、心室性不整脈の誘発頻度または出現時間がアパミン投与により、優位に改善した。(2)肥大心でKN-93(5mg/Kg体重)を2日間腹腔内投与したKN-93投与群とvehicle(100% Dimethyl sulfoxide)を投与した対照群で細胞膜分画におけるSK2チャネルタンパク質の発現を検討した。【結果】CaMKII抑制群(KN-93投与群)では対照群と比較し、細胞膜分画のSK2チャネルタンパク質の発現が減少傾向であることを認めた。【まとめ】病的心におけるCaMKIIを介したSKチャネル機能と構造制御機構の一旦を発見した。CaMKIIは多機能キナーゼタンパク質であり、病的心における不整脈治療ターゲットとしては副作用が多く出る可能性が考えられる。そこで心室筋での役割が十分に理解されていないSKチャネルに着目し、リン酸化CaMKIIとの協同が不整脈機序に関与している可能性を検討することができた。今後は本研究結果を踏まえ、リン酸化CaMKII―SKチャネル複合体に対する特異的分子標的治療薬の開発を進める予定である。
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