野生型のマウスの大動脈から血管平滑筋細胞を単離培養した。Passage 2-3の平滑筋細胞を、siRNAを用いてβ-アレスチン1またはβ-アレスチン2をノックダウンし、ウェスタンブロット法を用いて確認した。コントロールsiRNAをトランスフェクションした平滑筋と比較してβ-アレスチン1をノックダウンした平滑筋においては、アセチルコリン(1mM)に対する細胞内カルシウム濃度(Fura-2を用いて測定)の上昇が有意に亢進していた。このアセチルコリンに対するカルシウム濃度の上昇の亢進は、カルシウムを含まないバッファー、あるいはジルチアゼムの前投与下では消失した。次に、β-アレスチン1のプラスミドを平滑筋にトランスフェクションして過剰発現させたところ、アセチルコリンに対する細胞内カルシウム濃度の上昇がコントロールと比較して有意に抑制され、これはカルシウムを含まないバッファーにおいては消失した。一方で、β-アレスチン2のノックダウンにおいては、アセチルコリンに対する平滑筋の細胞内カルシウム濃度の上昇は、コントロールと差を認めなった。以上より、マウスの大動脈から単離した血管平滑筋において、β-アレスチン1はアセチルコリンによる細胞外からのカルシウム流入を抑制する作用を有し、血管収縮に抑制的に作用していることが示唆された。アセチルコリンによる血管収縮の亢進は冠攣縮性狭心症の主要な病態と考えられており、冠動脈においても同様の作用を有している可能性がある。
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