研究課題
「心臓圧負荷を起因とする心不全の病態でのYAPの役割の解明」を目的として研究を下記の(1)-(6)を中心に計画・実施した。特に今年度は(5)、(6)を追加実験として実施した。(1)心臓圧負荷(TAC)モデルマウスを作成して経時的な心臓でのYAPの活性化の測定してその経時的変化を同定した。(2)心筋特異的なYAPの活性化・遺伝子改変(WW45 cardiac specific knockout(WW45cKO))マウスでTACモデルを作成して、心臓表現型・心機能を評価した。(3)WW45cKOマウスの心不全の原因解明のため、RNAsequence分析を実施した。(4)3の結果からRescue実験を追加した。(5)さらに同様のモデルを高脂肪食負荷のマウスで検証した。(6)糖尿病をもつ心不全患者検体を用いて免疫染色でYAPの役割を調査した。今年度実施で得た研究結果のまとめを以下のとおりである。5の結果より高脂肪食負荷のマウス(糖尿病モデルマウス)は心臓でYAPの発現が亢進することを見出して、WW45cKOマウスの類似の病態のモチーフとなることがわかった。糖尿病モデルマウスの圧負荷によりYAP-TEAD1-OSM経路の活性化に伴い心不全増悪を認めた。YAP、TEAD1、OSMそれぞれの抑制で心不全の悪化が抑制されることがわかった。さらに糖尿病患者の心筋検体でもYAPが重要に関与していて、YAP-TEAD1-OSMが糖尿病に起因した心不全に寄与していることがわかった。
1: 当初の計画以上に進展している
研究は順調に遂行できて、高脂肪食負荷・糖尿病モデルマウスで圧負荷に起因した重症心不全が起こることを見出した(WW45cKOマウスの疑似モデルであることがわかった)。機序としてYAP-TEAD1-OSM経路が重要に関与していることを同定した。YAP/TEAD1/OSMのそれぞれのresucue実験を行い、WW45cKOマウスの心不全表現型が減弱されることを見出した。また、糖尿病に起因した心不全患者の心筋生検サンプルを用いた研究では、心筋細胞でYAP-TEAD1-OSM経路が重要に関与していることを同定して、糖尿病に起因した心不全での新規の治療ターゲットとなりうることを証明した。順調に成果を得たので、上記の結果の報告としてJACC Basic Transl Sci. 2019, 4:611-622. に最近、論文報告し採択された。
今回の研究経過で、糖尿病患者でYAP-TEAD1-OSM経路が重要に病態に関与していることが分かった。糖尿病患者のその他の心血管病に関与する因子としてYAP-TEAD1-OSM経路が重要な役割を果たす可能性を考え、糖尿病患者の検体を用いて、ELISAを用いてOSM活性などの解析を追加解析を検討している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Circ Res.
巻: 18 ページ: 292-305
10.1161/CIRCRESAHA.118.314048
JACC Basic Transl Sci.
巻: 4 ページ: 611-622
10.1016/j.jacbts.2019.05.006