研究課題/領域番号 |
18K15877
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
進藤 智彦 東北大学, 大学病院, 助教 (80781294)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心不全 / 介入研究 / 超音波治療 / 拡張障害 / eNOS |
研究実績の概要 |
左室収縮能の保たれた心不全(HFpEF) への低出力パルス波超音波(LIPUS)による効果を検討し,そのmechanismを解明することを目的として本研究を開始した。HEpEFに関しては、数々の大規模臨床試験が実施されてきたにも関わらず、予後を改善させる有効な治療法は未だ開発されていないのが現状であり、その開発が急務となっている。HFpEFは心筋の肥大・間質の線維化といった形態学的特徴を有することが多く、それに伴う心室スティフネスの上昇、左室拡張末期圧の上昇、左室充満の遅延といった拡張障害が主病態とされる。今回、HFpEFモデルとしてはdb/db miceを使用し研究を実施した。LIPUS治療群では、control群と比較して、心エコー検査と心臓カテーテル検査において左室拡張能(E/e'、tau、EDPVR)の有意な改善と心肥大の軽減を認めた。トレッドミル運動負荷試験においてはLIPUS治療群で有意に運動耐用能の改善を認めた。また、その分子機序として、western blottingをはじめとする生化学的評価によってeNOS-sGC-cGMP-PKG pathwayの関与が示唆された。さらに、心筋の電気生理学的検査を実施した結果、LIPUS治療後にCa handlingの改善を認めた。この機序として、eNOS-cGMP-sGC-PKG pathwayの関与が示唆された。以上から、HFpEFモデルマウスに対するLIPUS治療が、eNOSの発現上昇、活性化およびその下流の分子経路の活性化を介して左室の拡張障害を軽減し、その結果心不全を改善させると考えられた。この研究成果は現在、海外学術誌に論文投稿中である。現在、論文の追加実験のための準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、令和元年度はHFpEFモデルにおけるLIPUSの有効性の評価や、Ca handlingなどの電気生理学的評価を行い、その分子機序に関するデータを回収することができた。当初想定していた以上の分子機序の検討や考察がまとまり、論文投稿に進んでいることから本研究の進捗は概ね順調に経過しているものと考えられる。来年度は論文の追加実験を想定し、動物モデルや実験試薬などの準備を行っている。可能であれば、ヒトに外装するにあたり必要な電気安全性試験などの準備を進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は論文の追加実験を想定し、動物モデルや実験試薬などの準備を行っている。また、HFpEFに対する LIPUS治療の臨床化に向けて、専用の治療装置の開発を行う。前年度までの検討で得られた最適な照射条件を採用し、かつ、心臓全体に効率的に照射可能な独自の超音波発生装置を想定している(これらの開発は同時に特許申請を考慮して実施する)。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の追加実験のための実験動物(db/dbマウス)と試薬の購入のため、次年度使用額が生じた。
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