マウス心臓虚血再灌流障害モデルを用いたKUS剤の効果について、マウス心臓虚血再灌流障害モデルでKUS121を投与すると梗塞領域が減少し、心機能が維持された。また、ATP可視化マウスであるATeamマウスを用いた検討では、KUS121の再灌流後投与でもATPが維持された。加えて小胞体ストレスのマーカーとしてCHOPの発現も虚血境界領域においてKUS121投与群において有意に減少していた。KUS121は生体でもATPの保持、小胞体ストレスの減少を介して心保護効果を有することが判明した。 京都大学大学院医学研究科研究支援センターに設置されている細胞外フラックスアナライザーを用いてミトコンドリア機能に与える影響を検討した。tunicamycin投与でミトコンドリア機能は低下するが、KUS121投与によってミトコンドリア機能は保持され、ミトコンドリア機能保護効果もあることが判明した。 臨床応用を視野に入れた検討を行うため、大動物であるブタの虚血再灌流障害モデルでのKUS121の投与実験を行った。ブタの左冠動脈前下行枝をバルーンカテーテルで閉塞して心筋梗塞を作成し、60分後にバルーン拡張を解除して再灌流を得て、KUS121を左冠動脈前下行枝に選択的に投与した。組織学的および心臓MRIで梗塞領域を評価したところ、いずれもKUS121投与によって有意に梗塞領域が減少しており、ブタにおいてもKUS121は心保護効果を有することが分かった。 臨床応用のための安全性・毒性試験の端緒とするために正常マウスを用いてKUS121の薬物動態の検討を行った。KUS121は心臓の組織濃度はさほど高くはなく、局所投与での有効性が示唆された。梗塞モデルでの薬物動態も今後検討していく。
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