本研究は,未固定遺体を用いた冠動脈プラーク性状と冠動脈微小管腔構造および心臓周囲脂肪内炎症物質の解析により,冠動脈硬化症の病態および進展機序を解明することを目的としている.昨年度までは,光干渉断層法 (OCT)で観察される左冠動脈前下行枝の冠動脈内微小管腔構造とそこに隣接する冠動脈周囲脂肪内炎症と冠動脈内プラークの関係について,国内外の学会において発表してきた. 研究結果としては,微小管腔構造の多い部位は周囲脂肪内炎症が有意に多く発現しており,周囲脂肪の壁厚も有意に厚かった.また病理学的所見に関しては,plaque burden ratioは微小管腔構造の多寡で有意差はつかなかった一方で,外膜に存在するvasa vasorumのarea densityは微小管腔構造の多い部位でより増加する結果となった. これらの結果から,動脈硬化進展の前段階から局所的に周囲脂肪は厚くなり,そこにおける脂肪内炎症が微小管腔構造の増加を惹起させる可能性が示唆された.この研究結果について,現在論文投稿中である. 今後は近赤外線と超音波を用いた血管内画像診断装置であるNear infrared spectroscopy intravascular ultrasound (NIRS-IVUS)を用いることで,冠動脈内プラークの脂質性プラークサイズを定量的に測定し,OCTで観察される微小管腔構造との関係についての研究も進めていく予定としている.
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