研究課題
本研究は心血管病におけるミトコンドリアの役割を解明し、新たな治療法の確立を目指すものである。心臓はミトコンドリアが豊富に存在し、生体内において最も酸素消費量の多い臓器の一つである。そのため心筋梗塞などの虚血ストレスによる傷害を受けやすく、一方で酸素消費に伴って生じる活性酸素による傷害も受けやすい臓器であり、ミトコンドリアは心筋梗塞や心不全といった心血管病の病態生理に深く関与している。本研究では、まず慢性心不全におけるミトコンドリア機能の主要な機能制御分子がHif-1αであることに注目した。既に腎性貧血に対して臨床応用に至っているprolyl hydroxylase domain (PHD)阻害剤であるroxadustatを用いて心筋細胞の酸素消費量を減少させることにより、薬理学的に虚血耐性を誘導し、虚血再灌流傷害に対して治療応用が可能であることを明らかにした。また一方で、本来は虚血耐性を誘導するはずのHif-1αがその過応答によりp53が誘導され、心筋細胞がアポトーシスによる細胞死に至ることで、心筋梗塞後の心破裂を発症する一因となっていることを明らかにした。さらにドキソルビシン心筋症においては、ドキソルビシンと鉄がミトコンドリアにおいて複合体を形成し、活性酸素の最終生成物の一つである過酸化脂質を産生し得ることを明らかにした。本機序によって生じる細胞死は、近年新たに提唱されたフェロトーシスとされる制御性細胞死であることを示し、アポトーシスとともにドキソルビシン心筋症の発症および進展において主たる病態機序であることを明らかにした。
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Cardiovascular Drugs and Therapy
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