研究課題
心筋梗塞時の心筋壊死を極小化する機械-神経最適減負荷治療の開発において、初年度である平成30年度は、同システムの有効性証明実験の前段階である動作検証が主であった。 迷走神経刺激における心筋保護効果は、高強度ほど強まるが、過度な刺激は副作用(痛み、咳反射、嘔吐反射)や徐脈により血行動態が不安定になる。左室補助装置は、左室からの駆出がなくなる特異点以上に補助流量を上げて(左室の前負荷を減す)心筋酸素消費を著明に抑制する。これらの条件を両立させる制御アルゴリズムを開発し、実用化のためのスタートアップ協力企業とともに特許出願を行った。犬を用いた動物実験により、経皮的左室補助装置に迷走神経刺激による徐拍化を加えることによって、血行動態を改善させながら、いずれの左室補助様式においても有意(20-40%以上)の酸素消費抑制が可能となることを証明した。本課題の最終目標は心筋梗塞抑制と遠隔期の心不全低減である。犬虚血再灌流モデル(3時間虚血後に再灌流し、1か月後に梗塞サイズ、心不全マーカーを評価)を用いて、同システムの有効性を検証したところ、虚血120分後~再灌流60分までの2時間使用のみで著明な梗塞サイズ抑制と心不全指標の改善が認められた。
1: 当初の計画以上に進展している
申請時は、平成30年度までにアルゴリズム開発と動作検証までを予定していたが、企業との協力や特許出願などが予想以上に加速化したことから、システムを駆動する初期段階ソフトの開発が早期に終了した。そのために、梗塞サイズや心不全指標などの有効性を検証する実験を平成30年度中に行うことが可能となった。
平成30年度より引き続き、梗塞サイズ縮小効果と遠隔期心不全抑制検証を進め、同知見をエビデンス(論文)化する。また、虚血再灌流時および遠隔期(1か月後)に得られた血液もしくは心筋サンプルを用いて有効性メカニズム検証を行なう。犬での実験は小動物に比して評価項目は限定的となるが、酸素消費量抑制効果とともに遺伝子的(PCR法)、生化学的(ELISA法)な評価系を用いて虚血時と再灌流時の① 炎症 ② 酸化ストレス ③ 再灌流障害関連シグナルなどを評価する。
予定してよりも効率よく、データ収集を行うことが出来たため消耗品の購入が予定より安価であった。よって成果も当初の予定以上に進んだため、次年度に論文作成、成果発表のための学会出張費に充当する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 12件)
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