研究課題
我々は、心筋特異的ネプリライシン(NEP)過剰発現(αMHC-NEP Tg)マウスの作製にも成功しており、血中mouseANPと血中cGMP, 心臓組織でのcGMPがαMHC-NEP Tgマウスにおいて野生型マウスよりも有意に低下している事を確かめた。そして、αMHC-NEP Tgマウスに大動脈縮窄術(TAC)を施行し圧負荷による心不全モデルを作製したところ、有意に心機能が低下し、心臓の肥大と線維化を認めた.心臓リモデリングが血中ANPの低下によるものか、組織のANPの低下によるものかを確かめるため、外因性にhumanANP(0.66ug/kg/min)を持続投与した.外因性humanANPの血中濃度は,野生型マウスのbasal conditionと同じ血中濃度まで上昇させることができた.TAC後にhumanANPを投与したにも関わらず,αMHC-NEP Tgマウスの心肥大、心臓間質の線維化、そして心収縮能低下は改善されなかったことが確かめられた.このことにより,心筋組織でのNEPがANP・BNPを分解しcGMPを低下させることにより、心筋リモデリングを促進させる可能性が考えられた.NEP阻害薬とARBの合剤が近く心不全治療薬として国内で承認される予定である.我々の研究は,心筋細胞でのNEPの働きが重要であることを確かめたものである.NEP阻害薬の作用機序の1つが,心臓組織のNEPを阻害して直接的に心臓リモデリングを抑制する可能性を示唆していると考えられる.
2: おおむね順調に進展している
αMHC-NEP Tgマウスを用いた大動脈縮窄術により,NEPの心筋細胞での意義を確認することができた.
心臓組織の血管内皮細胞におけるNEPの働きを検証するため,血管内皮特異的NEPを作製し,大動脈縮窄術による心臓リモデリングを評価する予定である.
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