心臓局所におけるNEPの働きを検討するために、我々は心筋細胞でのNEPの過剰発現マウス(CM- NEP Tg)を作製した.Tgマウスのベースラインの評価として、血中のANP濃度が著明に低下し,血中cGMPと心臓組織のcGMP濃度が野生型マウス(WT)と比較して有意に低下していた.Tgマウスの血中ANP濃度の低下を補正するために,外因性にhuman ANP(hANP)を浸透圧ポンプで投与し(0.66 ug/kg/min),WTマウスの内因性マウスANP濃度と同程度まで上昇させた.3週間の大動脈縮窄術(TAC)を施行したところ,心重量,心臓の線維化,心機能の低下と肺重量の増加がTgマウスにおいてWTマウスより有意に認められ,心臓組織でのcGMPはTgマウスにおいてWTマウスよりも有意に低下していた.そして,外因性のhANPを投与しても、TgマウスにおけるTACによる心臓リモデリングと心機能低下は改善することができず,心臓組織のcGMPはTgマウスにおいてWTマウスよりも有意に低下したままであった.これらのことは,心臓組織のNEPの働きは,血中ANPよりも心臓組織のANPに対してより重要であることが示唆される.興味深いことに,TgマウスにおけるTAC後の肺重量の増加は,外因性hANPを投与すると改善し,ホルモンとしてのhANPの利尿作用により肺重量が低下したことが示唆される. 結論として、心臓組織におけるNEPの発現は心臓組織のcGMPを低下させ,TAC後の心肥大,心臓間質の線維化,心機能の低下を引き起こした.心臓組織でのANPに対するNEPの局所的な働きが,心臓リモデリングに重要であると思われる
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