研究課題/領域番号 |
18K15899
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
田井 義彬 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (60812394)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サーカディアンリズム / 入浴 / 冬季 / 血圧変動 / 自由行動下血圧 / 入浴関連事故 |
研究実績の概要 |
海外の大規模コホート研究から入浴習慣による総死亡や心血管死亡リスクの有意な低下が報告されている。一方、入浴関連死は公衆衛生上の重要な課題である。年間の入浴関連死は、交通事故による死亡数を上回っており、高齢者に多く発生する。また冬季の入浴関連死は、他の季節に比べて約6倍高いことが報告されており、冬季の安全な入浴方法の確立が急務である。健康若年者を対象とした生理学実験では、温熱曝露後の急な血圧低下が生じることが報告されている。血圧低下による意識消失が入浴関連死発症のメカニズムと推測されているが、詳細な機序は明らかではない。本研究では、自由行動下血圧計を用いて、冬季におい て入浴中血圧を実生活下で測定し、入浴中の血圧低下の実態と、入浴中の急激な血圧低下と関連する要因を明らかにし、安全な入浴方法を探索するが目的である。 平成30年度は4~12月に対象者募集を行い、本研究の主旨について説明を行った。さらに12~3月の間で、1週間に約30人の対象者の測定を実施するための日程調整を行った。調査開始日には、調査会場にインフォームドコンセントを取得したのち、標準化した自記式質問票を用いて対象者の基本特性の調査や安静時血圧の測定を行った。さらに自由行動下血圧測定機器の装着を行い、生活記録用紙に、入浴開始時刻、終了時刻の記載を求めた。1週間後に、自由行動下血圧装置と生活記録用紙を回収し、分析後に対象者に測定結果の説明を行った。 平成31年度までに、予定を大幅に越え、350名の測定を完了した。 令和1年度、所属講座が過去に収集したデータを用いて、入浴のタイミングと夜間血圧(カフ式血圧計を用いて測定)について検討した論文を発表した. 令和2年度、所属講座が過去に収集していたデータを用いて、入浴と睡眠潜時、皮膚温との関連を検討した論文を発表した。入浴中の血圧変動データのクリーニング、分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、当初の目標対象者数を超える人数の調査を実施し、初年度目標よりも1年早く、測定が終了した。 しかし、本年度中の論文発表には至らず、データクリーニング、データ解析までにとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
自由行動下血圧と入浴記録に関するデータを整理し、350名以上の入浴前血圧、入浴中血圧、入浴後血圧の分析から、入浴による血圧の影響を明らかにし、安全な入浴方法の確立に向けた基礎資料としたいと考えている。また、血圧変動に影響すると考えられる要因(年齢、性別、降圧薬内服、食事、入浴時刻)について、影響の大きさを定量化したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究結果を国際学会で発表する予定であったが、COVID-19の世界的な流行により、欧米への出張を断念し、旅費としての支出を見送った。感染の流行状況に応じて、次年度に学会への参加を検討する。統計解析や論文執筆に必要な経費として支出する。
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