研究課題
本研究では、左室収縮能の保たれた心不全(HFpEF)の原因と言われている慢性炎症による血管平滑筋細胞STAT3経路活性化の増強が、HFpEF発症における心臓と動脈との共通した重要経路であるとの仮説を立て検証している。加齢がHFpEF病態に及ぼす影響に関し検証した。雄の野生型マウス(WT)と平滑筋特異的SOCS3ノックアウトマウス(KO)に対し、加齢による経時的変化(若年モデル:8週齢、半年モデル:26~30週齢、1年モデル:52~56週齢)を評価した。体重は若年時より有意差にKO群で少なく、血圧はKO群で低かった(心拍数は有意差なし)。心臓重量/体重比はKOで有意に大きく、心不全による臓器うっ血を示唆している可能性を考えた。肉眼的には、心臓組織はKOで心外膜は有意に増加し、心筋に癒着し剥離困難な様相を示していた。組織学的には、心筋はシリウスレッド染色ではKOで心外膜側に有意に線維化を来たしており、Western Blotによるタンパク解析ではWTと比較しKOではP-STAT3の活性化が示唆され、形態変化においてSOCS3が関与している可能性が示された。心エコー検査では、8週、半年、1年モデルのWT、KOともに左室駆出率(EF)は保たれていたが、WTに比較しKOでは拡張障害の出現を示唆する結果となった。さらに、血清検体よりCRP、IL-6の測定を行ったところ、CRPに有意差は認めなかったが、IL-6はKO群で有意に増加しており、潜在的で慢性的な炎症の持続を示唆する所見が得られた。さらに、PCR Arrayでは加齢KO群において線維化マーカーの有意な亢進を認めており、慢性炎症と線維化の亢進によりHFpEFの病態を指名している可能性が考えられる。
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