高齢者では左室収縮機能の保たれているうっ血心不全が増加しているが、そのメカニズムは十分に解明されておらず、早期診断は容易ではない。本研究の目的は、生体インピーダンス法による体水分量測定と体水分貯留の一つの指標であるコペプチン、NT-pro BNPを測定し、心不全発症メカニズムの解明、および心不全ハイリスク患者のスクリーニング法の確立することである。私たちの疫学研究の中で次の3つの観察研究を行う。 1) 生体インピーダンス法を用いた体水分量の男女差、年齢の影響の検討:体組成計で測定した体水分量(細胞内液、細胞外液、全体水分量、細胞外液/全体水分量比)を男女で比較し、男女別に年齢群間の違い(加齢による変化)をみる。 2) 体水分量の指標とコペプチン、心機能指標との関連:コペプチン(水代謝調節系の中心であるバゾプレッシンの前駆体)を測定し、体水分量指標との関連を統計学的に検討する。またコペプチンの性差、加齢変化、心機能指標との関連についても検討し、体水分量の性差が水代謝調節系の差に起因しているかどうかを統計学的に検討する。 3) 生体インピーダンス法を用いた体水分量指標による心不全発症予測:測定した体水分量指標により、心不全、心血管疾患の発症を予測できるか統計学的に検討する。 佐賀県有田町の健康診査におけるデータ集積:有田町が実施する集団健康診査受診者で30歳以上の者のうち、本研究について同意が得られた者を対象として通常の健康診査に加え、心臓超音波検査、生体電気インピーダンス法による体水分量計測、追加血液検査(NT-pro BNP、コペプチン)を行った。2020年度は、体組成測定を行った集団に対して、心疾患関連死亡、心血管疾患の発症の有無を調査した。具体的には、有田町健康福祉課と協力し、郵送で心疾患発症の確認を行った。これらの情報を元にデータ解析を行い報告書を作成している。
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