2019年度はLILRB4がCOPDの病態形成にどのような役割を果たしているかを、エラスターゼ肺気腫モデルを用いて検証した。野生型マウスとLILRB4欠損マウスにエラスターゼを投与し、組織標本での平均肺胞径(Mean liner intercept:MLI)及びCTでの肺野全体における低吸収域(Low attenuation area:LAA)の割合で気腫を評価した。野生型マウスではエラスターゼ投与により平均肺胞径の拡張と低吸収域割合の増大を認め、気腫が形成されていることを確認した。さらにLILRB4欠損マウスでは野生型マウスよりも平均肺胞径、低吸収域割合共に増加しており、より強い気腫形成を認めた。エラスターゼによる肺気腫の形成には、酵素による直接的な破壊だけではなく、エラスターゼ投与早期に惹起される炎症反応が病態進行に重要であることが報告されている。LILRB4欠損マウスで気腫形成が亢進するのは、野生型マウスより強い炎症が生じるためだと考え、炎症反応を比較した。炎症を評価するに際し、エラスターゼによる炎症誘導が投与後どの時点で最も強いかを確認した。野生型マウスにエラスターゼを投与して、投与直後、3日後、7日後、14日後、21日後のBALの総細胞数、マクロファージ数、好中球数を比較した。総細胞数とマクロファージ数は投与7日後、好中球数は投与3日後に最も上昇した。エラスターゼ投与7日後での、野生型マウスとLILRB4欠損マウスのBALを比較した。エラスターゼ投与により総細胞数、マクロファージ数、好中球数いずれも有意に上昇するものの、野生型マウスとLILRB4欠損マウスの間に差はなかった。
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