研究課題
本年度は、本研究の目的のうち、COPD患者の身体活動性と抗老化因子であるGrowth differentiation factor11(GDF11)との関連を明らかにするため、COPD患者の身体活動性について前方視的に追跡調査を行った。前年報告の25名のうち、喘息COPDオーバーラップの診断に至った患者1名および観察期間中の脱落患者3名の計4名を除外し、新規登録患者3名の結果を追加し、最終的に安定期COPD患者24名(Ⅰ期:2名、Ⅱ期:11名、Ⅲ期:8名、Ⅳ期:3名)の患者で検討を行った。1日平均歩数の変化は血漿中GDF11量変化の間に、有意な正の相関関係を認めることを明らかにした(r=0.41、p=0.047)。各運動強度別の活動時間についても解析を行い、3.0METs以上の運動強度活動時間変化(r=0.57、p=0.004)、および2.5METs以上の運動強度活動時間変化(r=0.50、p=0.013)と血漿中GDF11 量変化との間に有意な正の相関を認めることを示した。1日平均歩数の変化と呼吸機能の変化との間には有意な相関関係は認めなかった。また、1日平均歩数の変化と炎症性マーカーの変化との間においても有意な相関関係は認めなかった。重回帰分析を用いて、COPD患者の身体活動性の変化に影響を与える要因を調査し、血漿中GDF11量の変化は、年齢、BMI、mMRCスケール、呼吸機能の変化といった交絡因子の影響を除いても、1日平均歩数の変化に有意に関与することを明らかにした。細胞老化はCOPD進行に関与するといったこれまでの報告と併せて考えると、COPD患者において、身体活動性の向上・維持がCOPD進行抑制に有効である可能性が示唆された。なお、本研究結果については国際誌に投稿し受理済みで印刷中である。
1: 当初の計画以上に進展している
臨床データの蓄積がすすみ、COPD患者において血漿中GDF11量と身体活動度の間に有意な相関が得られ単変量解析も行い、論文を一報作成することができた。当初の予定より計画は順調に進んでいると考える。
ここまでの研究で得られた結果を元に、さらにCOPD患者の症例を集め、臨床的に細胞老化マーカーとなり得る因子について検索を行う。在宅酸素療法を必要とするような重症例におけるリハビリテーションの効果についても検討を行う。細胞老化に関しては酸化ストレス、窒素化ストレスが重要であるため、可能であれば動物モデルや培養細胞モデルを用いて分子細胞学的にGDF-11の役割についても検討を行いたいと考える。
昨年度までに症例の集積が進み、論文作成により消耗品や試薬について使用量が見込みを下回ったため次年度への使用額が生じた。次年度はより重症例を増やしたり、動物実験、細胞実験によるGDF11の機能解析を進める予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
巻: - ページ: -