研究課題/領域番号 |
18K15918
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
漆山 博和 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20725303)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性肺線維症モデル / 上葉優位型肺線維症 / 新規治療薬 |
研究実績の概要 |
現在、肺線維症モデルとして一般的なブレオマイシン肺線維症モデルは、線維化よりも炎症が主体であり、ブレオマイシン投与3~4週目にその肺障害が最大となるものの、その後は自然に軽快していくことが知られており、ヒトの特発性肺線維症のような慢性進行性間質性肺炎よりも、自然軽快傾向を認め予後が良好な器質化肺炎に近いモデルであることから、間質性肺炎の病態解明や治療法の開発において、その結果が必ずしも間質性肺炎に応用されないことも経験されている。 マウス・ラット肺移植モデルでは、一般的な肺線維症モデルとして知られるブレオマイシンモデルとは異なり、移植肺において炎症に加えて線維化も強く生じるため、モデル肺においてはヒトの慢性進行性間質性肺炎に類似した組織を呈する。特に胸膜直下肺胞領域に肺胞虚脱を伴った帯状線維化を示し、上葉優位型肺線維症に類似した組織像を呈することから、現在のところ確立した治療法がなく予後不良な上葉優位型肺線維症の病態解明・治療法の開発に有益なモデルである。 我々はマウス・ラット肺移植モデルを作成し、その移植肺の病理学的評価を用いて、ヒト慢性進行性間質性肺炎をよく反映していることを確認し、RNA-seqや組織免疫化学を用いて肺線維症の発症機序について、解析を行っていく。 また肺線維症の治療においては、細胞外基質を主として産生する肺線維芽細胞の増殖抑制が治療に有効であると考え、新規治療薬候補として肺線維芽細胞にG1cell cycle arrestを誘導し、増殖を抑制するalpha 1-アドレナリン受容体阻害薬を見出し、論文として発表した。 今後は浸潤する炎症細胞に着目し、その細胞浸潤を抑えることによって肺線維化形成を抑制できるかについても検討を加えていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
マウス・ラット肺移植モデルは手技難易度が高く、結果についても想定以上に個体差を認めた。結果としてヒト慢性肺線維症と同様に多彩な組織像を呈するため、その解釈が難しい。
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今後の研究の推進方策 |
各種免疫染色の結果、線維化の程度と相関を示す細胞外基質を見出しており、今年度はその解析を進めていく。また並行してRNA-seqを行い、肺線維化形成に重要な遺伝子群を絞り込み、介入による治療可能性について検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス・ラット肺移植モデルの作成が想定より難航しており、解析対象となるヒト肺線維症と類似したマウス・ラット肺組織が少なく、想定よりも試薬費用やRNA-seqなどの解析費用が少なくなった。解析を進めていく細胞外基質やRNA発現については候補を得ており、今後はその解析費用が掛かると想定している。
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