研究課題
本研究は、胚盤胞補完法を用いて多能性幹細胞に由来する肺臓器をマウス生体内で作成することである。肺が欠損するFgf10欠損マウスは出生後に生存できないため、CRISPRA/Cas9システムにてExon1とExon3ヘテロマウスをそれぞれ作成し、系統維持した。Fgf10 Exon1とExon3の複合ヘテロマウスはFgf10 ホモ欠損マウスと同様の表現型であることを示し、この複合ヘテロ胚盤胞を用いることにより、ES細胞(Fgf10 wild)で補完したキメラマウスが複合ヘテロ胚盤胞由来であることを簡便に遺伝子解析する方法を開発した。次に、GFP陽性ES細胞をマイクロインジェクションした121個のFgf10 Ex1-/+ × Ex3-/+ 胚盤胞胚を偽妊娠マウス子宮に着床させ、43匹(36%)の産仔が得られた。新生児期での解析で20匹(47%)の産仔が出生時にGFP陽性(キメラ)で、うち5匹がFgf10 Exon1/Exon3複合ヘテロ胚盤胞由来であった。また、成熟期での解析では同じく胚盤胞補完法を実施した638個のFgf10 Ex1-/+ ×Ex3-/+ 胚盤胞胚から、153匹(24%)の産仔が得られた。76匹(50%)の産仔が出生時にキメラで、うち16匹(21%)が成体まで異常なく発育した。遺伝子解析の結果、5匹がFgf10複合ヘテロ胚盤胞由来であることを証明した。機能学的及び組織学的な解析を行ったところ、複合ヘテロ胚盤胞由来のキメラマウスの肺は実質部分(胞Ⅰ型上皮細胞、Ⅱ型上皮細胞など)のみではなく、間質部分(血管内皮細胞、平滑筋細胞、結合組織など)も優位にGFP陽性ES細胞に由来することを示した。本研究成果は肺疾患解明のためのモデル動物開発や肺移植を目指すための肺臓器再生研究に大きく貢献するものと期待される。
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Cell Reports
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