研究課題
途上国では多剤耐性結核やHIV陽性結核が深刻な問題となっている。これらの問題解決には、結核の分子病態に 立脚した診断、病勢把握、 治療反応予測に有用なバイオマーカー開発が急務である。 種々の細胞が分泌する細胞外小胞エクソソームは新たな細胞間・臓器間のコミュニ ケーション手段として脚光 を浴びている。我々はこのエクソソームをバイマーカー探索のソースとして使用した。健常人 10 人、結核患者 10 人の血清からサイズ排除クロマトグラフィーを用いてエクソソーム の単離を行い、ノンラベル定量プロテオミクスにより 1661 種類のタンパクを同定した。さらに、 それらのエクソソーム蛋白は、従来組織でしか捉えることができなかった膜蛋白や鍵分子を含 むことを見出した。同定したタンパクによるPCA解析では、健常人と結核患者がグルーピングさ れた。30 個のタンパクが結核患者において有意に 2 倍以上上昇しており、バイオマーカー候補 タンパクとした。その中には、結核治療により、良好に低下しているタンパクが複数同定された。 また、非結核性抗酸菌症患者やサルコイドーシス患者血清との比較においては、共通して上昇し ているタンパクや、結核患者のみで上昇しているタンパクがあり、やはり PCA 解析によりそれぞれの疾患をグルーピングすることができた。 今後はバイオインフォマティクスによる解析による病態への関与等を検討し、さらなる解析に より結核菌の断片等を同定することが期待される。また、患者数を増やした大規模試験で、 Targeted proteomics(Selected Reaction Monitoring)による検証を行うことにより、バイオ マーカー候補タンパクの精度や再現性の確認を行なっていく。このバイオマーカ探索のストラテジーは、様々な疾患に応用可能であると考えられる。
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