免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が申請者が過去に同定した新規がん精巣抗原特異的T細胞に及ぼす影響と抗腫瘍効果との関連解析を行うことを目的として研究を開始した。得られたICI投与を受ける肺がん患者の臨床検体を用いてフローサイトメトリーを用いたT細胞解析を進めた。新規がん精巣抗原特異的T細胞の進行肺がん患者末梢血から検出を目的とし検体を保存、解析を進めていたが、抗がん剤治療中の進行肺癌患者の末梢血中からは解析に必要な十分量の特異的T細胞を検出することができなかったため研究の方針を変更した。呼吸器外科と共同研究を開始し手術検体を用いて腫瘍浸潤T細胞からの解析を試みる方針とした。解析中にT細胞と抗原提示細胞の免疫シナップス形成に重要なDrebrin陽性T細胞の浸潤が多い患者とDrebrin陰性T細胞が肺癌組織内に存在することを同定した。腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞を空間解析、定量解析を行い、術後生存期間、術後無増悪生存期間の関係解析を進め成果を研究論文として報告した。 2020年から腸内細菌が腫瘍免疫活性化し能動免疫を促進する可能性に注目し解析を進め、その研究成果を報告した。さらに腸内細菌叢の遺伝子解析を進め、腸内細菌とICIの治療効果、抗腫瘍免疫応答の増強に対する研究へ解析範囲を広げて研究成果を研究論文として報告した。得られた研究成果応用し、ICI(腫瘍免疫抑制回避)と免疫活性化を誘導する腸内細菌(能動免疫)を併用するがん免疫療法の開発につなげるための研究を進めている。今年度には整腸剤が複合免疫療法(化学療法+免疫療法)の投与を受ける患者への臨床効果に関する後ろ向き解析結果を報告した。PPIや抗菌薬などのdysbiosisを誘導する薬剤が投与されていた肺がん患者において特定の菌株が投与されると全生存期間が延長することを見出した。
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