研究課題/領域番号 |
18K15929
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
坪内 拡伸 宮崎大学, 医学部, 助教 (60573988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 交感神経 / グレリン / 肺癌 |
研究実績の概要 |
交感神経の過活動は炎症、発癌および癌の進展と関連する。本研究では、交感神経の過活動と炎症および発癌/癌進展との関連、グレリンが交感神経活性を強力に抑制することに着目し、(1) 交感神経過活動がARDSモデルの肺炎症と肺上皮Pten欠損マウスにおける発癌/癌増殖へ与える影響、(2) 交感神経過活動時の神経型アセチルコリン受容体陽性(α7nAChR陽性)肺胞マクロファージの役割、(3)グレリンの抗交感神経活性を介した抗炎症と癌増殖抑制効果について検討する。 2018年度では、迷走神経切断処理の有無により肺傷害の程度が変化するかを検討するため、10週齢のC57BL6マウスを迷走神経切断群およびsham群に分け、LPS 5mg/kgを気管内投与した。気管内投与後24時間で気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収し、BALF中の蛋白質濃度を比較した。その結果、2群間では有意な差は認められなかった。次にグレリンシグナルの有無による発癌への影響を検討するため、グレリン欠損マウスおよび野生型マウスにウレタン 1mg/kgを計4回腹腔内投与し(8週齢、12週齢、16週齢、20週齢)、60週齢で肺癌の有無を評価した。その結果、グレリン欠損マウスでは複数の肺癌結節を認めたが、野生型マウスでは肺癌の発生は認められなかった。以上から、グレリンシグナルの欠損が肺癌の発癌に影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①交感神経過活動がもたらす肺炎症への影響の検討、②交感神経過活動がもたらす発癌/癌進展への影響の検討、③グレリンの欠損による発癌への影響の検討、④交感神経過活動時の肺胞内α7nAChR陽性マクロファージの機能の解析、⑤ARDS症例および進行期肺癌におけるカテコラミン値と予後との関連、を検討する。 2018年度においては、迷走神経切断では肺の炎症への影響は認められなかった。2019年度ではβ刺激剤投与による炎症の評価を行う予定である。グレリンシグナルと発癌の関連については、グレリン欠損マウスを用いた検討により、グレリンの存在が発癌を抑制する可能性が示唆された。2018年度において、7症例のARDS症例と10症例の進行期肺癌の交感神経活動度の評価を行った。上記のデータを得たことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
迷走神経切断処置単独では肺炎症への影響は認められなかった。グレリンは強力な抗炎症作用を有するペプチドであるが、その抗炎症効果はグレリンの直接的な作用と迷走神経活動の活性化を介する作用が考えられている。今後は、β刺激剤の投与下による炎症および発癌の影響を検討することに加え、迷走神経切断モデルによるグレリンの抗炎症効果を評価する予定である。さらに、ARDS症例および進行期肺癌の交感神経の活動度を評価し、予後との関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
迷走神経切断処置により肺炎症の悪化が予想されていたが、sham群と比較して顕著な差が認められなかったため、肺胞洗浄液中のサイトカイン濃度の評価は行わなかった。よって、次年度使用額が発生した。
2019年度において、β刺激剤投与による交感神経過活動モデルを作成し、肺炎症を評価するために使用する。
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