研究課題/領域番号 |
18K15929
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
坪内 拡伸 宮崎大学, 医学部, 助教 (60573988)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 交感神経 / グレリン / 癌 / ARDS |
研究実績の概要 |
交感神経の過活動は炎症、発癌および癌の進展と関連する。本研究では、交感神経の過活動と炎症および発癌/癌進展との関連、グレリンが交感神経活性を強力に抑制することに着目し、(1) 交感神経過活動がARDSモデルの肺炎症と肺上皮Pten欠損マウスにおける発癌/癌増殖へ与える影響、(2) 交感神経過活動時の神経型アセチルコリン受容体陽性(α7nAChR陽性)肺胞マクロファージの役割、(3)グレリンの抗交感神経活性を介した抗炎症と癌増殖抑制効果について検討する。 2019年度では、ARDSの病態におけるグレリンシグナルの意義を検討するため、グレリン欠損マウスおよびグレリン受容体欠損マウスを用いて、肺炎症の程度を検討した。その結果、グレリンシグナルと炎症病態で重要な役割をもつ分子の発現との関連が示唆された。グレリンシグナルの欠損により、炎症病態において上記の分子の発現の誘導が抑制されることを、免疫染色、ウェスタンブロッティング、RT-PCRにより明らかにした。また、ヒト由来肺上皮細胞株(BEAS-2B)、マウス由来マクロファージ様細胞株(J774.1)用いて、LPS添加時に生じる細胞障害について、グレリン受容体の欠損が齎す影響を検討した。β刺激剤の投与による交感神経活性の過活動は、炎症病態モデルにおける体重の消耗に影響が認められた。現在、ARDSの病態において、グレリンの血中濃度や上記の分子の発現レベルの推移の解析を進めている。また、交感神経の活動強度の評価を、肺癌患者21例とARDS患者7例で実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①交感神経過活動がもたらす肺炎症への影響の検討、②交感神経過活動がもたらす発癌/癌進展への影響の検討、③グレリンの欠損による発癌への影響の検討、④交感神経過活動時の肺胞内α7nAChR陽性マクロファージの機能の解析、⑤ARDS症例および進行期肺癌におけるカテコラミン値と予後との関連、を検討する。 迷走神経切断によるグレリンの抗炎症効果への影響を検討したが、迷走神経切断の有無によるグレリンの抗炎症作用の変化は認められなかった。また、グレリン欠損マウスへのウレタン反復投与は野生型よりも早期に発癌が認められた。β刺激剤の投与による交感神経活性の過活動は、炎症病態モデルにおける体重の消耗に影響が認められた。また、交感神経の過活動をグレリン投与によって抑制した結果、炎症病態における体重減少が抑制された。グレリンの抗炎症作用機構について、マウス由来マクロファージ様細胞株(J774.1)用いて検討し、グレリンの発現と炎症機構に関与する特定のシグナルとの関連を解析している。また、交感神経の活動強度の評価を、肺癌患者21例とARDS患者7例で実施した。上記のデータを得たことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
グレリンシグナルと炎症機構との関連を、in vivoおよびin vitroで検討する。さらに、グレリンによる迷走神経回路の活性化と抗炎症および癌増殖制御の影響を詳細に検討するため、迷走神経のefferent nerveの薬剤的切断を用いて、ARDSおよび発癌モデルを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
迷走神経切断を施した動物実験にて、当初予定していたより少ない頭数で有意な差が得られたため、マウスの購入費用が予定より少なかった。次年度において、新たな解析(グレリンシグナルと炎症病態の関連の検討)に用いる。
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