研究課題/領域番号 |
18K15932
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
黒崎 史朗 自治医科大学, 医学部, 助教 (60625705)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | AAVベクター / 肺線維症モデル / IL-10 |
研究実績の概要 |
肺線維症におけるIL-10の役割を解明するために、マウスモデルを用いて解析を行った。肺線維症モデルはマウスの皮下にブレオマイシンを充填させた浸透圧ポンプを埋め込み、約4週間で作成できることを確認した。ブレオマイシンの投与が開始されると、一定の割合で体重減少が見られること、3割ほど死亡に至ることが判明した。肺線維症はマウスの肺を摘出し、HE染色ならびにMasson's Trichrome染色で確認した。ブレオマイシンによる肺線維症はヒトにおける特発性肺線維症のように胸膜下を中心に線維化が生じることを確認した。IL-10発現AAVベクターはHEK293細胞を用いてウイルスベクターを増殖させ、塩化セシウム密度匂配遠心法で精製した。本治療ベクターをマウスの気管内に投与し、経時的に血液と気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取すると、肺特異的にIL-10が発現しており、5週間に渡って高い濃度で発現することが明らかになった。 今年度はまずIL-10発現AAVベクターがブレオマイシン肺線維症に対する予防効果を示せるか、ある程度のマウスの個体数を持って確認することにした。つまり、最初にIL-10発現AAVベクターまたはバッファーを気管内投与し、その1週間後にブレオマイシンまたは生食を充填した浸透圧ポンプをマウスの皮下に埋め込み、2週間後、4週間後を評価した。マウスは4群に分類され、各群のマウスはn=6-10で設定した。すると、コントロール群ではたとえAAVベクターを投与しても肺に影響を及ぼさないことが分かり、ブレオマイシン肺線維症マウスにおいてはIL-10発現AAVベクターを投与した群(治療群)では疾患群に比べ、有意に生存率の改善、体重減少率の低下、線維化の発症抑制を認めた。各種サイトカインやコラーゲンを定量化し、それらの改善も確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は肺線維症におけるIL-10の予防効果が確実に得られることを目標とし、各群の個体数もある程度を持って示すことができた。これらの実験はおおむね予定通りに終了し、上記の結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はブレオマイシン肺線維症を発生させてから、IL-10発現AAVベクターを投与することを目標に実験を行う。ブレオマイシンの投与を開始して2週間後または4週間後の時点でAAVベクターを投与し、さらにその4週間後を目安に生存率、体重変化、線維化について解析していく予定である。線維化については、上記で示した実験と同様に、組織学的評価や生化学的分析を行って解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の実験については、あらかじめ行われていた実験を裏付けするものであったことや、AAVベクターについてもある程度のストックがあったため、購入費用が少なくて済んだ。次年度は肺線維症モデルマウスの作成については、2週間後と4週間後で分けて実験を行うため、より多くのAAVベクターの作製や試薬、組織学的解析、生化学的手法など今年度の2倍以上要すると見込まれ、それらに必要な購入に使用する予定である。
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