肺線維症におけるIL-10の役割を解明するために、マウスモデルを用いて解析を行う実験を行った。肺線維症モデルはマウスの皮下にブレオマイシンを充填させた浸透圧ポンプを埋め込み、約4週間で作成できることを確認し、その方法を用いた。IL-10を効率よく肺に導入するために、AAVベクターを用いて、同ベクターにIL-10遺伝子を搭載させ(IL-10発現AAVベクター)、肺線維症モデルマウスの気管内に単回投与した。当初、ブレオマイシンを充填した浸透圧ポンプを埋め込んで、肺線維症を発症させてからIL-10発現AAVベクターを投与し、治療効果を評価したが、途中経過で肺線維症マウスが3割ほど死亡してしまうため、まずは、IL-10発現AAVベクターの肺線維症マウスに対する予防効果を評価することにした。つまり、最初にIL-10発現AAVベクターをマウスの気管内に投与し、その後1週間経ってから、ブレオマイシン充填浸透圧ポンプをマウスの皮下に埋め込む実験を行った。誘導された肺線維症および治療効果を判定するために、血液と気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取、肺切片、肺破砕抽出液を得、それを病理学的および生化学的アッセイにて評価する実験を行った。今年度はこれまでに得られた検体から、コラーゲンの定量といくつかの炎症性サイトカインの定量的評価を行った。これまでの結果であるが、肺線維症群に比べてIL-10を搭載したAAVベクターを投与された治療群の方が有意差をもって、コラーゲンの合成が抑制されていることを確認した。炎症性サイトカインについては、IL-6が有意に治療群で抑制されていることが分かった。
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