EGFR遺伝子変異はdriver oncogeneの一つであり、そのキナーゼ活性を阻害する分子標的薬(EGFRチロシンキナーゼ阻害剤:EGFR-TKI)が非常に高い臨床効果を示すが、必ず耐性が生じることが問題である。第1,2世代EGFR-TKI初回治療の増悪例ではおよそ半数がT790M変異による耐性が生じ、これに対してはosimertinibが有効であるが、一部の症例でC797Sの追加変異が出現して再び耐性となる。 申請者は、血漿中のcfDNA をdroplet digital PCRを用いて高感度にEGFR変異を検出する方法を検討し、T790M後のosimertinib治療に対する抵抗性が出現した一部の症例でT790M/C797Sの出現が確認でき、組織検体からの検出と良好に相関することを確認した。さらには臨床的な画像評価による増悪の数か月前から、血中コピー数の増加を検出可能であり、より早期に薬剤耐性を認識できる手法と期待される。この研究結果はC797S/T790Mを迅速に検出して治療に結びつける手法として非常に有望であると考えられる。 令和2年12月からは、C797S耐性変異陽性進行EGFR肺癌に対するブリガチニブ+パニツムマブ併用療法の多施設共同第I/II相試験(AMED革新がん研究)において、実際の症例登録が開始され進行中である。申請者も研究開発分担者として役割を果たすにあたって、上記の知見は大きな利点になると考えられる。 また、臨床検査でex19 delと判定されていたが実際にはL747Pのpoint mutationであったと判明した症例を経験した。このL747PはOsimertinibにやや低感受性であり、in silico simulationにおいてαC helixの構造的な膠着性が高いことを証明できており、今後治療不応性症例の原因として重要な知見を得られた。
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