悪性中皮腫は難治性の疾患であり、従来の枠組みにとらわれない治療法の開発が急務である。我々は、腫瘍で活性の高い転写調節領域によってウイルスの複製に必須の遺伝子E1の発現を制御する腫瘍融解性アデノウイルスを用い、これに低分子化合物を組み合わせることで腫瘍への選択性と抗腫瘍活性とを増幅する手段について検討した。 本研究の結果、①p53欠損型の腫瘍に対してアデノウイルスを選択的に増幅する方法と②特定の脂質合成酵素が正常細胞よりも多く発現している腫瘍で選択的にウイルスを増幅する方法とを見いだした。これらの結果は、腫瘍融解性アデノウイルスの、より強力で選択的な治療法開発の可能性を示唆している。
|