研究課題
加齢関連難治肺疾患である肺線維症において、線維化誘導性の細胞老化に陥った線維芽細胞が難治性の病態形成に寄与するとの仮説から、新規の細胞運命決定である長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)に注目し、同病態の線維芽細胞の細胞老化を制御するlncRNA群を同定することで疾患の新たな治療介入標的や疾患のバイオマーカーにすることを目指している。R2年度は以下の研究を進めた。lncRNAの発現調節による細胞表現型制御:昨年度に同定したIPF関連lncRNAの一つXを線維芽細胞に形質導入し、向線維化性や細胞老化の表現型を評価したところ、lncRNA-Xの発現回復はIPF由来の老化線維芽細胞においてp16/p21などの老化関連制御因子の発現抑制を誘導することが分かった。さらに、lncRNA-Xの遺伝子欠損マウスを作成し、その肺の表現型を評価した。lncRNA-X欠失細胞の肺組織では老化関連βガラクトシダーゼ染色陽性の老化細胞の増多が認められた。さらにlncRNA-X欠失マウスにブレオマイシンを用いて肺線維症を誘導し、線維化の程度を検討している。さらにIPFの病態形成に関わる新たな機能性lncRNA候補を同定したため、予備的な機能解析を開始した。また細胞老化により病態形成を媒介するミトコンドリアDNAの肺線維症へ寄与を解析した。ミトコンドリア代謝異常を反映して、IPFの患者由来の血清ではミトコンドリアDNAの濃度が上昇しており、その増多がIPF患者の不良な予後、および急性増悪の発症と相関することを発見した。
3: やや遅れている
バイオマーカーの検索のための臨床検体収集は、コロナウイルスの蔓延による受診抑制、臨床検体への取り扱いの制限などで遅れている。
研究計画を一年延長して最終年度は血清からのlncRNA定量検出を進める。マウスモデルについては新たに細胞老化に関わる経路を制御する因子の欠損マウスでの解析を進める。
当初予定していた実験計画のうち、遺伝子改変マウスモデルが予測した通りの結果とならなかった。このため、新たな遺伝子改変マウスを用意し、解析の準備をしている。このための費用として次年度に持ち越した。また血清lncRNAの定量解析が、臨床検体の収集がコロナウイルス蔓延などの影響により遅れた、ため、計画していた分析試薬などの使用を次年度に持ち越すことになった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
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