研究課題/領域番号 |
18K15950
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
谷口 暁彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (90751123)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニューロペプチドY / 慢性閉塞性肺疾患 / 肺気腫 / NPY / COPD |
研究実績の概要 |
豚膵由来エラスターゼ(PPE)をマウスに経鼻投与し,エラスターゼ誘導マウス肺気腫モデルを作製,このモデルにおいて,ニューロペプチドY(NPY)の役割を検討した。静肺コンプライアンスなどを含む呼吸機能の測定を行い,気道炎症の評価として,気管支肺胞洗浄液(BALF)中の炎症細胞数,BALFや肺ホモジネート中のサイトカイン・ケモカインレベルを測定し,また肺の組織学的評価を行った。 野生型マウスにおいて,PPEを投与後に肺の気腫化が起こり,また肺のNPYが増加することを確認した。NPY欠損マウスは野生型マウスに比して,PPE投与2日目のBALF中の好中球数が多く,投与21日目の呼吸機能測定では,より高い静肺コンプライアンスを示し,平均肺胞間距離による組織学的評価では,より強い気腫化を起こしていた。またNPY欠損マウスでは,PPE投与後2日目のBALFと肺ホモジネート中のKC,MIP-2などのケモカインが野生型マウスに比して高値で,肺ホモジネート中のIL-17が高値であった。さらに,野生型のエラスターゼ誘導マウス肺気腫モデルに,NPYを腹腔内投与したところ,気腫化が抑制された。 上記の結果から,NPYが欠損すると急性期の気道炎症や肺のIL-17産生が増強し、気腫化の増悪を認めること,NPYを投与すると気腫化が抑制されることが示され,NPYは気腫化に対して保護的な作用を有する可能性が示唆された。これは,慢性閉塞性肺疾患や肺気腫の治療にNPYを応用できる可能性を示唆する重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,フローサイトメトリーによるIL-17のソースとしてのTh17細胞,3型自然リンパ球(ILC3)の解析,免疫染色によるNPYのソースの検索,NPYの受容体作動薬であるY1アゴニストの投与,NPYを不活化するDPP-4の阻害を目的とするDPP-4阻害薬投与などを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に購入・使用した物品(試薬類)が当初の見積もりよりも若干少なく,受領額に余りを生じたが,研究計画全体での必要経費は交付額を下回らないと予測しており,従って次年度,これを試薬類の購入に充てさせて頂く予定である。
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