研究課題
① EGFR-TKI耐性細胞の作成と耐性化へのPAI-1の関与の検討;PC9 (Exon19欠失変異を有するヒト肺腺癌細胞株)とH1975(L858R変異とT790M変異を有するヒト肺腺癌細胞株)を1μMのgefitinib、または0.5μMのosimertinibを含む培養液(IC50の30-50倍)で培養し、Day9に残存している細胞をEGFR-TKI耐性細胞とし定義した。(1)EGFR-TKIに耐性化したPC9はPNA-LNA PCR Clamp法においてT790M、C797S変異が認められなかった。また耐性化したH1975でもC797S変異は認められなかった。(2)EGFR-TKI耐性化した細胞におけるPAI-1 mRNA発現をquantitative RT-PCRで評価したところ、PC9、H1975のいずれも、耐性化細胞は耐性化前と比べてPAI-1 mRNAが高発現していることが示された。(3)EGFR-TKI耐性化したPC9、H1975に対してPAI-1阻害薬であるSK-216を投与したところ、これらの細胞の増殖能が抑制されることが示された。以上の結果より、PAI-1は肺腺癌のEGFR-TKIに対する耐性化に関与していることが示された。② Osimertinibに耐性化と耐性化していないH1975の間でマイクロアレイによる網羅的mRNAの発現解析を行った。その結果、Osimertinib耐性細胞では耐性化していない細胞に比べて、E-cadherinの発現低下、Fibronectinとα-SMAの発現上昇が認められ、Osimertinib耐性H1975はEMTを起こしていることが示唆された。我々は現在、PAI-1がEMTを介してEGFR-TKIへの体制に関与している可能性を考え、研究を進めているところである。
2: おおむね順調に進展している
初年度で実験計画の3分の1の研究が終了しているため。
PC9、H1975以外のEGFR遺伝子変異陽性ヒト肺癌細胞株を用いて、EGFR-TKI耐性時のPAI-1発現の評価、EMTマーカーの評価い、今まで得られている実験の結果の再現性を担保する。また免疫不全マウスにEGFR遺伝子変異陽性ヒト肺癌細胞を皮下接種した肺癌モデルマウスを作成する。このモデルを用いて、EGFR-TKIを投与した後に残存した腫瘍組織でもin vitroの結果と同様の変化が生じること、さらにはPAI-1阻害薬を用いることで耐性細胞の出現を抑制できるかどうかを検証する。
今年度は、残余の試薬の使用が可能であったため、助成金の残余が生じた。今年度は動物実験を実施予定のため、ここに残余の助成金を利用する予定である。
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J Cell Mol Med
巻: 23 ページ: 2984-2994
10.1111/jcmm.14205.